「好きなことを仕事にしよう」
そんな言葉を、私たちは何度も耳にしてきました。
一方で、現実的な助言として、こんな声も聞こえてきます。
「まずは、得意なことを活かして成果を出すべきだ」
成果は出ているのに、どこか満たされない。
好きなことをしているのに、生活は苦しい。
この2つの間で揺れ動いた経験は、多くの人にあるのではないでしょうか。
キャリアにおける究極の問い。
それは――
「得意を活かす」のが正解なのか。
それとも「好きを仕事にする」べきなのか。
この記事では、
経済的な合理性が高い 「得意(Can)」を軸にした戦略と、
精神的な充足感をもたらす 「好き(Will)」を軸にした戦略を比較しながら、
年収と幸福度を両立させる、現実的なキャリアの最適解を探っていきます。

「得意を活かす(Can)」メリットとデメリット
― 市場価値を最大化する戦略
ここでいう「得意」とは、
人よりも楽に、あるいは高い質でこなせるスキルのことです。
メリット:圧倒的な成果と高い報酬
得意を主戦場にすると、キャリアは安定しやすくなります。
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努力に対する成果が出やすく、ROI(投資対効果)が高い
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周囲から「結果を出す人」として信頼される
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裁量やチャンスが増え、報酬も上がりやすい
まずは経済的な自立と評価を手に入れたい人にとって、
「得意を活かす」は非常に合理的な選択です。
デメリット:飽きと感情の枯渇
しかし、落とし穴もあります。
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作業がルーチン化し、刺激が減っていく
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「できて当たり前」になり、達成感を感じにくくなる
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ふとした瞬間に、
「自分は何のために働いているのか」と虚しさを覚える
成果が出ているからこそ、
心の置き場を失うケースも少なくありません。
「好きを仕事にする(Will)」メリットとデメリット
― 情熱をエネルギーに変える戦略
「好き」とは、
誰に言われなくても没頭でき、探究をやめられない対象です。
メリット:圧倒的な継続力と創造性
好きなことは、行動を自然に継続させます。
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努力を努力と感じにくい
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学習スピードが速く、長期的に強い専門性が育つ
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困難に直面しても、情熱が折れにくい
時間を味方につけられるのが、「好き」を軸にする最大の強みです。
デメリット:市場性と「嫌いになる」リスク
一方で、現実は甘くありません。
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好きなことが、必ずしも市場の需要と一致しない
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収益化までに時間がかかる、あるいは稼げない
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義務やノルマが加わり、
純粋だった「好き」が苦痛に変わることもある
「好きだから続けられる」と
「仕事として成立する」は、別問題なのです。
【結論】キャリアの正解は「掛け算」にある
ここまで読むと、
どちらにもメリットとデメリットがあることが分かります。
つまり、答えは――
「どちらか」ではありません。
得意と好きを、どう組み合わせるか。
これが、後悔しないキャリアの核心です。
【実践】時間軸で考えるキャリア戦略
キャリア初期:まずは「得意」で信頼を稼ぐ
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経済的な基盤を作る
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市場で評価される経験を積む
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自己効力感を高める
ここで成果を出すことが、後の自由度を広げます。
キャリア中期:「得意」の中に「好き」を混ぜる
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得意な領域の中で、関心のある分野に寄せていく
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プロジェクト選択や専門分野を少しずつ調整する
安全圏から、好きに近づくフェーズです。
キャリア完成期:「好き」を得意の域まで育てる
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長年の情熱が、技術を凌駕する
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代替不可能な存在になる
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高単価・高満足の働き方が可能になる
ここで初めて、
「好き」がキャリアの中心に立ちます。
「好き」を稼げる仕事に変えるチェックリスト
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Can(得意)
好きなことの中に、人より少し上手くできる要素はあるか? -
Needs(需要)
お金を払ってでも解決したい人は存在するか? -
Combination(掛け算)
得意なA × 好きなB で、自分だけのポジションを作れるか?
この3点が揃えば、
「好き」は仕事として成立する可能性を持ち始めます。
自分の「得意」を見極めるには、まずは自分の強みにフォーカスすることが近道です。欠点を補うのか、それとも突き抜けた個性を磨くのか。市場価値を高めるための具体的な自己投資については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【あわせて読みたい】 【生き残るための自己投資】「短所を克服」vs「長所を伸ばす」ビジネスで勝てるのはどっち?
まとめ:あなたのキャリア診断
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まず成果を出し、安定を手に入れたいなら
→ 「得意」を主戦場にする -
人生の充足感を大切にしたいなら
→ 「好き」を軸に、得意を後付けする
幸福なキャリアとは、
「得意なことで感謝され、好きなことで心を満たす」
そのバランスの中にあります。
どちらを選ぶかではなく、
今の自分に、どちらが必要か。
その問いを持てたとき、
あなたのキャリアは、もう迷い始めています。

私自身、「好き」を優先して遠回りしたことも、「得意」に寄せて割り切った時期もありました。
振り返って思うのは、どちらが正しいかではなく、今の自分にどちらが必要だったかということです。

