「よくやったね!」と褒められるのと、「大変だったね」とねぎらわれるのと。
あなたはどちらを言われた時に、より「自分のことを見てくれている」と感じますか?
どちらも相手を肯定するポジティブな言葉ですが、その裏側にある「視線の高さ」を理解すると、相手との心の距離をぐっと縮めることができます。

「褒める」:成長を促す「評価」の光
特徴:上から下へのポジティブな査定
「褒める」という行為は、優れた成果や行動に対して、一歩高いところから下される判断です。
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メリット: 相手の自信を高め、やる気を引き出します。特に子供の教育や、部下の育成においては強力なエンジンになります。
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リスク: 常に「評価」の視線が含まれるため、大人同士や対等な関係では、無意識に「上から目線」と感じさせてしまう危険があります。「品評されている」という感覚を与えてしまうことも。
「ねぎらう」:苦労を分かち合う「共感」の温度
特徴:同じ目線で、プロセスに寄り添う
「ねぎらう(労う)」の語源は、神様の心を和ませる「和ぐ(なぐ)」にあるとも言われます。相手の苦労を認め、その疲れを癒やす行為です。
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メリット: 結果がどうあれ、そこに至るまでの「プロセス」や「努力」に光を当てます。相手と対等な立場に立ち、「あなたの頑張りを知っていますよ」という深い共感を伝えます。
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魅力: 言う側も言われる側も、同じ高さの目線でいられるため、心のガードが下がり、深い信頼関係が生まれます。

【解決策】:心に刺さる言葉の変換術
現代は、SNSなどで数字や成果で「褒められる(評価される)」機会は多いものの、心から「ねぎらわれる」機会が減っている時代かもしれません。
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「すごい」を「助かった」に変えてみる: 「すごいね(評価)」と言う代わりに、「あなたがいてくれて助かったよ(感謝・ねぎらい)」と伝えてみる。これだけで、言葉は評価の枠を超えて「愛」になります。
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結果が出なかった時こそ「ねぎらい」の出番 :成功したときに褒めるのは簡単です。しかし、失敗したときや、結果が出なかったときにこそ「あそこまでやったのは知っているよ」とプロセスを認める。これが相手にとって、生涯忘れられない一言になります。
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自分自身も「ねぎらう」: 一番忘れがちなのが、自分へのねぎらいです。100点の結果が出せなくても、「今日一日、投げ出さずにやったね」と自分を労うことで、他人にも優しい言葉がかけられるようになります。
筆者の視点:私たちが本当に欲しいのは「理解」だった
かつて会社勤めをしていた頃、厳しい要求に応えるのが当たり前の環境にいたことがあります。休みの日でも電話がかかってきたり、即答を求められたり……。
そんな時、もし誰かに「よくやった」と褒められるよりも、「〇〇さん、いつも本当に大変だったね」と静かにねぎらわれていたら、どれほど救われただろうと思います。
「褒める」は相手を高い場所へ押し上げる言葉ですが、「ねぎらう」は相手の隣にそっと座る言葉です。
人生100年時代。誰かと競うフェーズを過ぎた私たちにとって、一番心地よいのは、こうした「横の目線」の温かさなのかもしれません。
まとめ:言葉の「高さ」を意識してみる
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相手を鼓舞し、自信をつけさせたいなら: まっすぐに「褒める」。
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相手の孤独を癒やし、絆を深めたいなら: 優しく「ねぎらう」。
あなたの周りにいる大切な人へ。評価の物差しを一度置いて、その人が歩んできた道のりを「ねぎらう」一言を届けてみませんか。
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