「今度の顔合わせ、普段着でいいですから」
娘の結婚相手のご両親からそう言われた時、あなたなら何を選びますか?
「普段着」と言われたからには、ネクタイを締めたスーツでは堅苦しすぎて、相手に気を遣わせてしまうかもしれない。かといって、本当にいつもの休日スタイルで行くわけにもいかない……。
実は、この「普段着」と「私服」という言葉の使い分けを理解すると、大人のマナーとしての「正解」が見えてきます。

「私服」:個人の自由を表現する服
定義:役割から解放された「自分の服」
「私服」という言葉は、主に制服や礼服といった「役割を果たすための服」に対する対義語です。
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ニュアンス: 自分の好み、個性、その日の気分を最優先する服。
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シチュエーション: 友人との買い物、家でのリラックスタイムなど、完全に「自分主体」の場面で使われます。つまり、相手にどう見られるかよりも、自分がどうありたいかが基準になります。
「普段着」:本来は「日常の服」、でも大人の場では?
定義:生活の中で着慣れた、くつろぎの服
「普段着」は本来、家事や仕事、近所への外出など、日常的に着る服を指します。しかし、改まった席で相手が「普段着で」と言うとき、そこには高度な「気遣い」が込められています。
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ニュアンス: 「(窮屈な礼服ではなく)リラックスして、お互いの人柄がわかるような時間を過ごしましょう」という相手からの招待状。
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シチュエーション: 顔合わせ、親戚の集まり、少し良いレストランでの食事会。
【解決策】顔合わせで「普段着で」と言われた時の黄金律
ネクタイ不要が確定した今、隆一さんが選ぶべきは「私服(個人の自由)」ではなく、「整えられた普段着(ビジネスカジュアル)」です。
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「普段着=家着」ではない :相手が「普段着で」と言うのは、あなたの緊張を解いてあげたいという優しさです。それに対するこちらの誠意は、「こちらもあなたとのご縁を大切に思っています」というメッセージを服装に乗せること。つまり、「手抜き」ではなく「着崩しの美学」が求められます。
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「ジャケット」は最強のコミュニケーションツール :ネクタイを外しても、ジャケットを一着羽織るだけで「普段着」は「よそ行き」に昇格します。ホテルの個室という場にも馴染みますし、もし相手がもっとラフであれば、その場で脱いで椅子にかければいい。ジャケットは、場を重んじる「敬意の象徴」なのです。
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「足元」と「インナー」で引き締める シャツはアイロンの効いたものを。靴は履き潰したスニーカーではなく、清潔な革靴やレザースニーカーを。この「先端」を整えるだけで、ノーネクタイでも十分に品格が保たれます。

筆者の視点:相手の「大丈夫」の裏側にあるもの
以前、若い世代が使う「大丈夫です」という言葉への違和感について書きました。
言葉には常に、表の意味と裏の意図があります。
今回、お相手からいただいた「普段着でいいですよ」という言葉。
その裏側にあるのは、きっと
「堅苦しい儀式よりも、これから家族になる者同士、温かい会話を楽しみましょう」
という安心感への願いではないでしょうか。
相手の「私服(自由)」に合わせるのではなく、相手が作ってくれた「リラックスした場」に、最大限の敬意を持って参加する。それこそが、大人の「普段着」の使い分けなのかもしれません。
服装の選び方ひとつで、相手との距離感は変わります。言葉の選び方も同じですね。
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