本記事では、自動車の車検証に記載されている「車両重量」と「車両総重量」の違いを詳しく解説します。
どちらも「クルマの重さ」を示す数字ですが、指している中身が異なります。
特に、乗用車(セダン・ミニバンなど)と貨物自動車(トラック・バンなど)では、同じ言葉でも含まれる内容が変わる点に注意が必要です。
「車両重量=クルマ単体の重さ」「車両総重量=人や荷物を乗せたときの最大の重さ」とざっくり覚えることもできますが、実際にはもう少し奥があります。この記事では、その違いを例を交えて整理していきます。
車両重量とは?
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定義:車検証において、「燃料・潤滑油・冷却水・標準装備品を含んだ状態のクルマの重さ」。
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要するに:人も荷物も乗っていない、クルマ単体の重さ。
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乗用車では:ドライバー1名分(約55kg)を含めて計算される。
例:乗用車の場合
・トヨタ・プリウス(例)
→ 車両重量:1,360kg
→ これは車体本体+燃料+運転者1名分の重さ。
例:貨物車の場合
・トヨタ・ハイエースバン
→ 車両重量:1,680kg
→ 荷物を積まない状態の車体そのものの重さ。
👉 「車両重量」はクルマの“素の重さ”。
構造・装備の違いによってグレードごとに変わります。
車両総重量とは?
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定義:「車両重量」に乗員・最大積載量を加えたときの総重量。
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要するに:人や荷物をフルに乗せたときの、走行中の最大の重さ。
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車検・道路法令上では、この「総重量」で区分されることも多い。
例:乗用車の場合
・プリウス(定員5名)
→ 車両重量:1,360kg
→ 車両総重量:1,635kg(+乗員4名×約55kg)
例:貨物車の場合
・ハイエースバン(最大積載量1,000kg)
→ 車両重量:1,680kg
→ 車両総重量:2,680kg(1,680+1,000)
👉 貨物車は「荷物」を前提とするため、積載量を重視した数字になる。
乗用車では「人」、貨物車では「荷物」が総重量を左右します。
なぜ違いが大事なのか?
「車両重量」と「車両総重量」の違いは、単なる数字の話ではありません。
実は、安全性・法令・税金・運転免許のすべてに関わる重要な情報なのです。
燃費や税金に関わる「車両重量」
車両重量は、自動車重量税の基準になります。
車が重くなればなるほど、エネルギーを多く使うため、税金も高く、燃費も悪化しやすい傾向があります。
また、重量が増えるとタイヤやサスペンションへの負担も大きくなり、長期的なメンテナンスコストにも影響します。
免許区分を決める「車両総重量」
車両総重量は、運転できる免許の種類を決める基準になります。
たとえば普通免許の場合、
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車両総重量:3.5トン未満
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最大積載量:2トン未満
という制限があります。
この上限を超えると、中型免許や大型免許が必要になります。
つまり、積みすぎや乗せすぎで総重量を超えた状態は、
→ 「免許の条件を超えた運転」=法令違反になる可能性もあるのです。
安全性・制動距離・転倒リスク
ここが最も大事なポイントです。
最近、定員オーバーの軽乗用車がカーブを曲がり切れずに横転した事故が報道されました。
このような事故の背景には、車両総重量のオーバーがあります。
車は設計上、定められた「総重量」で最も安定するように設計されています。
人や荷物を乗せすぎると、
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重心が高くなり、カーブでの横転リスクが増す
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ブレーキ距離が長くなる
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サスペンションやタイヤが想定以上の負荷を受け、摩耗・破損を早める
など、安全性が著しく低下します。
特に軽自動車やミニバンのような車高の高い車種は、荷物や乗員の重さで重心が変化しやすく、わずかなカーブでも車体が大きく傾きやすくなります。
定員オーバーは単なるルール違反ではなく、命に関わる行為なのです。
正しい理解が「事故を防ぐ」
「車両重量」はクルマそのものの設計バランス、
「車両総重量」はそのバランスを保てる限界ラインを示しています。
どちらの数字も「車検証」に明記されています。
新しい車を買うとき、キャンプや引っ越しで荷物を多く積むときなど、
自分の車の“総重量の限界”を知っておくことが、安全運転の第一歩です。
👉 つまり、
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車両重量 … コスト・設計の基準
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車両総重量 … 安全・法律の基準
数字の違いを理解することは、「税金を抑える」だけでなく「事故を防ぐ」ためにも欠かせないのです。
まとめ
「車両重量」と「車両総重量」は、どちらも“クルマの重さ”を示す言葉ですが、意味と役割は大きく異なります。
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車両重量 … 車体そのものの重さ(燃料・装備・運転者1名を含む)
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車両総重量 … 車両重量+乗員+荷物=走行時の最大重量
この2つの違いを理解することは、税金・免許・安全性すべてに関わる大切な知識です。
特に注意したいのは「安全性」。
近年、定員オーバーの軽乗用車がカーブで横転する事故なども報道されています。
車両総重量を超えると、
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重心が上がり、カーブでの安定性が低下
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ブレーキ距離が伸び、停止が間に合わない
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サスペンションやタイヤに過剰な負荷がかかる
といった危険が一気に高まります。
クルマは「設計上の重量バランス」で成り立っています。
それを超える使い方は、性能の限界を超えた危険運転に直結します。
👉 「車両重量」は“クルマの基礎体力”、
「車両総重量」は“クルマの限界ライン”。
この違いを知ることが、安全運転と快適なカーライフを守る第一歩です。