ビジネスで「NO」を伝えるのは、簡単なようで非常に難しい問題です。
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「引き受けたらキャパオーバー…」
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「断ったら関係が悪くなるかも…」
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「立場上強く言えない…」
そんな時に、多くの人が使う言葉が
「難しいです」 と 「厳しいです」。
どちらも“断る言葉”ですが、
相手が受け取る印象は大きく異なります。
この記事では、
✔ 相手に角を立てずNOを伝えたい
✔ 断った後の関係が不安
✔ 上司や取引先に言いづらい
そんな悩みをもつ読者に向けて、
この2つの言葉の 心理学的差と実践的な使い分け を解説します。
「難しいです」と「厳しいです」——違いは“責任の所在”
「難しいです」
→ 自分側に理由がある表現
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予定が重なった
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実力不足
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リソースが足りない
相手が受け取る印象
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「工夫すればできるんじゃ?」
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「調整次第では可能かも?」
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言い訳っぽく聞こえる場合あり
👉 やんわり断る時に適しているが、粘られる可能性も。
「厳しいです」
→ 事情が外部・客観にある表現
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社内ルール
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予算
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締切
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上司判断
相手が受け取る印象
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「仕方がない」
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「変えられない事情がある」
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再交渉が難しいと理解されやすい
👉 断りの強さは上がるが、冷たく聞こえることも。

心理学的に見ると:NOの受け取りやすさが違う
「難しい」は、
相手に「あなたの依頼が悪いわけではない」と伝える緩衝材。
「厳しい」は、
こちらの都合ではなく「外部要因」を理由にするため
納得されやすい。
ただし、
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難しい → 希望を残す
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厳しい → 関係を切る空気も出る
この差を理解しないと、
控えめな言葉が逆効果になったり、
強めの言葉が関係悪化を招いたりします。
シーン別「どっちを使うべき?」
| シーン | 正解 |
|---|---|
| 再調整できる余地がある | 「難しいです」 |
| 依頼の再検討を促したい | 「難しいのですが〜なら対応可能」 |
| 外部ルールで不可能 | 「厳しいです」 |
| 今後も同じ依頼が想定される | 「継続的に厳しいです」 |
| トラブル回避で断固拒否 | 「申し訳ありませんが厳しいです」 |
NG表現 —— 意外と関係を悪くする言い方
❌ ① 「無理です」
→ 一瞬で対話を終了させる“遮断の言葉”
たった3文字ですが、
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「聞く余地なし」
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「話す価値なし」
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「拒絶された」
と相手の脳は反射的に判断します。
「無理」と言われると、人間は“怒り”より先に“屈辱”を感じます。
特にメールだとニュアンスが伝わらず、
冷たい・高圧的・非協力的 に映りがち。
💡「無理です」は、会話の扉を閉じる言葉。
❌ ② 「忙しいので」
→ 相手の事情を切り捨てる言い訳に聞こえる
「忙しい」は、自分だけでなく誰もが抱えている状況。
そのため、
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「それはこっちも同じ」
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「自分の仕事は軽く見られているのか?」
と受け取られる危険があります。
さらに
忙しいを理由にすると、次も同じ理由が使えなくなる ので、
自分の首を絞めることにもなります。
💡 “忙しい”は共通言語すぎて、理由になりにくい。
❌ ③ 理由だけ長く説明する
→ 誠意のつもりが“言い訳のオンパレード”に聞こえる
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予定が重なっていて…
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実は先週から体調が…
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他の案件が想定より…
伝えれば伝えるほど、
「長い=言い訳」
「そこまで言うなら最初から断った?」
「責任を避けたいだけ」
と受け止められることがあります。
人は説明が長いと
“隠している”“ごまかしている”と感じる傾向 があるためです。
💡 NOを伝える時ほど“説明は短く簡潔に”。
✍ 結論:NOは“短く・明確に・角を丸く”
断るときのポイントは
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短く
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理由は必要最低限
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代替案をそえる
例:
「今回はスケジュールの関係で難しいのですが、〇日以降でしたら対応可能です。」
相手との関係を壊さず、
“誠意は示しつつNOを伝える”ための基本戦略です。
プロが使う「柔らかい断りのテンプレ」
① 「難しい+条件提示」
→ 交渉の余地を残すことで、拒否ではなく“調整”として伝える
例文:
「現状難しいのですが、期限を1週間延ばしていただければ対応可能です。」
相手は “NO” と受け取らず、
ゴールがまだ存在している と理解します。
心理効果:
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「前向きに検討してくれている」と感じる
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信頼感が損なわれない
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相手が歩み寄りやすくなる
👉 完全拒否ではなく、条件付きのYESに変換する技。
② 「厳しい+責任の所在を明示」
→ 自分ではなく“外部ルール”を理由にすることで感情対立を回避
例文:
「社内規定の都合上、今回はこちらで対応することが難しい状況です。」
この表現は
あなたと相手の対立を、「人 vs 会社のルール」にすり替える 効果があります。
心理効果:
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「個人的に拒否された」と受け取られにくい
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感情の矛先がこちらに向かない
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再交渉を断りやすい
👉 プロが最もよく使う“角を立てない防御”の表現。
③ 「代替案を提示」
→ NOの代わりに、“別のYES”を差し出す
例文:
「私では厳しいのですが、〇〇でしたら対応可能かと思います。」
または、
「別の方法として、オンライン対応でしたら可能です。」
代替案を出すことで、
相手は“協力してくれている”と感じます。
心理効果:
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気持ちが否定で終わらない
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“あなたは味方だ”と印象づけられる
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次の依頼にも繋がる
👉 断ることより、“関係を残す”ことが目的。
✦ 最終結論:断る時に守るべき優先順位
NOを伝えるときの優先順位は明確です。
1️⃣ 感情ではなく事実を伝える
2️⃣ 過度な説明はしない
3️⃣ 可能なら代替案を出す
断る=拒絶ではありません。
むしろ、“断り方”こそ信頼を作るスキル。
あなたが拒否したのに感謝されることがあるとすれば、
それは 「NOを肯定的な未来へつなげた」 からです。
まとめ
■ 「難しいです」
→ こちら側の事情。やわらかいが粘られる。
■ 「厳しいです」
→ 外部の事情。納得されやすいが冷たさも。
✔ 断りは“言い方”より“距離感と代替案”
✔ 目的は「断る」ではなく「関係を壊さない」

出来ることと出来ないこと、可能なことと不可能なことをはっきりさせておいた上で、「難しい」なのか「厳しい」なのかを使い分けるといいかも。
