「据付」と「設置」、これらの用語はしばしば混同されます。たとえば、「照明機器の据付」と「照明機器の設置」という表現を見てみましょう。どちらも適切に思えますが、実際にはどうでしょうか?これらの用語が同じ意味で使われることはあるのでしょうか?
この記事では、「据付」と「設置」の間に存在する微妙な違いと、それぞれの適切な使い方を詳しく解説していきます。
「据付」と「設置」の意味の違い
「据付」と「設置」の用語は、似ているようでいて実は異なる意味合いを持っています。
「据付」とは、設備を特定の場所に固定して移動できないように設置することを指します。
一方で、「設置」は単に設備を設定する行為を意味し、これには設備を作る行為も含まれます。
これらの用語の違いを簡単にまとめると、前者は「固定する」というニュアンスが強く、後者は「設定する」の意味が広がっています。次の部分で、これらの違いを具体的な例を交えて詳しく説明していきます。
「据付」の意味とは
「据付」とは、設備を特定の場所に固定して、動かないように備え付けることを指します。この用語は、「設置」も含む備え付けの概念ですが、「据付」には「動かないように」という追加の意味合いがあります。
簡単に言うと、「据付」はその設備が移動しないようにしっかりと固定することを意味します。例えば、「暖房機器の据付」や「照明機器の据付」といった表現では、機器をただ置くだけでなく、ネジや固定具を使って場所にしっかりと固定します。このように設備が完全に固定されることが「据付」の特徴です。
「設置」の意味とは
「設置」という用語は、設備を備え付けること、または機関などを新たに作ることを指します。
初めに、「設備を備え付ける」という意味に焦点を当てましょう。この場合、設置は「据付」と似ていますが、重要な違いがあります。「設置」には「動かないように」という条件が必ずしも含まれていません。例えば、「照明機器の設置」は、その機器が移動する可能性があるかもしれませんし、ないかもしれません。動かせるような電気スタンドを置く場合も「設置」に含まれますが、動かないように固定した場合は「据付」と同じ意味になります。
次に、「設置」のもう一つの意味、即ち機関などを新たに作ることについて説明します。これは、新しい組織や部門を作る行為を指します。例えば、会社が「営業部から独立して『営業企画部』を設置する」という表現は、新しい「営業企画部」という組織を作ることを意味しています。この用法では、「設置」は物理的な物だけでなく、組織や部署にも適用される用語です。
「据付」と「設置」の違いを整理
ここで、「据付」と「設置」の違いを明確に整理しましょう。
「据付」は、設備を特定の場所に動かないように固定して備え付けることを指します。これは設備がその場所に永続的に設置されることを意味し、移動する余地はありません。
一方で「設置」は、設備をある場所に備え付ける行為を示しますが、これには固定する必要は必ずしもなく、設備が移動可能である場合も含まれます。さらに、「設置」は物理的な設備だけでなく、新たに機関や組織を作るという意味合いも持ちます。
このように、「据付」と「設置」は用語は似ていますが、使い分けることで意図した通りの正確な表現が可能になります。
「据付」と「設置」の辞書での意味
ここで、辞書における「据付」と「設置」の定義を確認しましょう。
「据付」の辞書での意味
「据付」に関して直接的な記述は辞書には見当たりませんでしたが、「据付ける」の語を参照しました。
【据付ける】
・道具や機械などを、ある場所に動かないように設置する。「エアコンを―」
引用元: 旺文社国語辞典
この定義は、「動かないように設置する」という点で、先に説明した内容と一致しています。
「設置」の辞書での意味
【設置】
・設備・機関を設けること。「自動販売機を―する」「委員会を―する」
引用元: 旺文社国語辞典
この定義は、「設備や機関を設けること」と説明しており、物理的な設備の設置だけでなく、組織的な要素を作り出す意味も含まれていることが分かります。これも以前の説明と整合性があります。
「据付」と「設置」の使い方
以下に、「据付」と「設置」の使い方を例文を通じて説明します。
「据付」の使い方
- エアコン標準据付工事セットを購入し、専門業者による設置を行なった。
- 先行して搬入された台車に、重機を据付する作業を実施した。
- 道路改良工事の一環として、ボックスカルバートの据付工事が完了した。
- カラオケスピーカーを内蔵するラックへの据付接続作業を行なった。
これらの例では、「据付」が「固定して動かないようにする」という意味合いで使用されていることがわかります。
「設置」の使い方
- イベント開始までのカウントダウンを表示する時計を会場入口に設置した。
- 地域住民の利便性向上のため、生鮮食品の宅配ボックスを試験的に設置してみた。
- 企業の透明性を高めるため、独立した監視委員会の設置を決定し、それに必要な権限を委任した。
- 新しい部活の設立については、教育委員会ではなく各学校が設置の可否を決定している。
「設置」の例では、物理的な設備の設置から、新しい組織や制度の設立に至るまで、より広い意味で用いられていることが見て取れます。
まとめ
ここまで、「据付」と「設置」の意味の違いとその使い分けについて説明しました。
「据付」は設備などを特定の場所に動かないように固定して設置することを指します。この用語は、設備がその場所に永続的に固定されることを意味し、移動の可能性はありません。
一方、「設置」は設備を備え付ける行為を指し、これには設備を固定することも、固定しないで設置することも含まれます。さらに、「設置」は設備の設置だけでなく、新たな機関や組織を作る行為も含む広い用法を持っています。
このように、「据付」は常に固定を伴いますが、「設置」は固定するかどうかが選択可能であり、また組織的な要素を含む場合もあります。これらの用語を正しく使い分けることで、意図した通りの正確な表現が可能になります。