日常会話や文学作品などで「うとましい」や「わずらわしい」という表現に出会うことがあります。どちらも「嫌だな」「関わりたくない」といったネガティブな感情を表しますが、実は込められているニュアンスが少し異なります。
「うとましい」は嫌悪や拒絶感を表すのに対し、「わずらわしい」は手間や面倒さに対する感情を指します。
本記事では、それぞれの意味・漢字表記・使い方を例文とともに整理していきます。
「うとましい(疎ましい)」の意味と使い方
漢字表記
「うとましい」は通常 「疎ましい」 と書きます。「疎む(うとむ)」は「遠ざける」「嫌がる」という意味の漢字で、そこから派生した言葉です。
意味
「疎ましい」は「嫌だ」「不快だ」「近寄りたくない」といった強い拒絶や嫌悪の気持ちを表します。感情的な拒否感を前面に出し、人や物事に対して“嫌な感覚”を強調します。
特徴
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相手や状況に対する「好ましくない」「関わりたくない」という気持ちを表す
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感情的・心理的な嫌悪が中心
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現代の日常会話ではやや古風で文学的な響き
例文
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嘘ばかりつく彼の態度が疎ましい(うとましい)。
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彼女の存在を考えると疎ましい気分になる。
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夏の湿気は本当に疎ましいものだ。
「わずらわしい(煩わしい)」の意味と使い方
漢字表記
「わずらわしい」は通常 「煩わしい」 と書きます。「煩う(わずらう)」は「心を悩ませる」「病む」「困る」といった意味を持ち、そこから「手間がかかって嫌だ」「面倒だ」というニュアンスに発展しました。
意味
「煩わしい」は「面倒だ」「手間がかかって嫌だ」といった意味を持ちます。嫌悪感というより、余計な手間や複雑さに対する“不便・負担”を表します。
特徴
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実務的・事務的な「面倒」を表す
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感情的な嫌悪よりも「負担が大きい」「ややこしい」というニュアンス
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ビジネスや日常で幅広く使われる
例文
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この手続きは書類が多くて煩わしい(わずらわしい)。
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人間関係のしがらみが煩わしい。
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ちょっとした確認でもいちいち印鑑が必要なのは煩わしい。
「疎ましい」と「煩わしい」の違いまとめ
表現 | 漢字 | 意味 | ニュアンス | 使用場面 |
---|---|---|---|---|
うとましい | 疎ましい | 嫌だ、不快だ、遠ざけたい | 感情的・心理的な嫌悪 | 人や出来事に対する感情表現 |
わずらわしい | 煩わしい | 面倒だ、ややこしい、負担だ | 実務的・客観的な不快感 | 手続き・作業・人間関係 |
間違った使い方に注意
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「疎ましい」 → 感情的に嫌な相手や出来事に使う
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「煩わしい」 → 手続きや手間に使う
→ 「書類の多さが疎ましい」は不自然ですが、「煩わしい」なら自然です。
逆に「彼の存在が煩わしい」というと“面倒な人”という意味で使えますが、“嫌悪感”を強調したいなら「疎ましい」が適切です。
まとめ
「疎ましい(うとましい)」と「煩わしい(わずらわしい)」はどちらもネガティブな感情を表しますが、
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疎ましい → 感情的・心理的な嫌悪や拒絶
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煩わしい → 手間や複雑さによる負担や面倒
という明確な違いがあります。場面に応じて正しく使い分けることで、相手により正確に自分の気持ちを伝えることができます。