ニュースやビジネス文書でよく登場する「見合わせる」という言葉。
「イベントを見合わせることにしました」などと使われますが、この表現は「見送る」「延期」「中止」「保留」「自粛」といった似た言葉に置き換えられることもあります。
ただし、それぞれの言葉には微妙なニュアンスの違いがあり、適切に使い分けないと誤解を招くことも。
本記事では、「見合わせる」と近い意味を持つ表現を整理し、その違いと使い分けのポイントを分かりやすく解説します。
「見合わせる」の意味と使い方
「見合わせる」には大きく二つの意味があります。
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実行を一時的に控える(=今はやらないでおく)
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お互いに顔を見合わせる(=視線を交わす)
この記事では主に①の意味を取り上げます。
特徴
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判断を保留する、実行を控えるニュアンス
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「完全に中止」とは限らず、状況次第で再開する余地を含む
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ビジネス文書や報道で多用されるフォーマルな表現
例文
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天候不良のため、運行を見合わせます。
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不具合の調査が終わるまで、サービス提供を見合わせることにしました。
「見送る」との違い
「見送る」は、“実行しないと決める”ニュアンスが強い言葉です。
「見合わせる」が“状況次第で実施の可能性が残る”のに対し、「見送る」は“今回はやらない”と判断が下されたイメージです。
例文
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新規プロジェクトは予算の都合により見送ることにしました。
→ 見送った以上、その案件は一旦終わり。再開は考えにくい印象があります。
「延期」との違い
「延期」は、“予定を後ろにずらす”ことを意味します。
「見合わせる」が実施の有無を含んで曖昧な表現なのに対し、「延期」は“いつかはやる”ことを前提としています。
例文
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台風接近のため、セミナーを来週に延期いたします。
→ 日程を変更するだけなので、実施自体は確定しています。
「中止」との違い
「中止」は、“完全にやめる”ことを意味します。
「見合わせる」が含みを残した表現なのに対し、「中止」は再開の可能性がない、断固とした決定を示します。
例文
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参加人数が集まらなかったため、イベントは中止になりました。
→ 「見合わせました」ではまだ可能性が残りますが、「中止」は完全終了の意味です。
「保留」との違い
「保留」は、“結論を出さずに先送りする”という意味です。
「見合わせる」が行動そのものを控えることを表すのに対し、「保留」は意思決定そのものを棚上げするニュアンスがあります。
例文
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その件については、上層部の判断待ちのため保留とします。
→ 「見合わせる」は実際の動作を止める印象、「保留」は判断を止める印象です。
「自粛」との違い
「自粛」は、“自ら控える”という意味です。
社会的状況や道徳的判断に基づき、自発的に行動を控えるニュアンスが強く、「見合わせる」よりも主体性が際立ちます。
例文
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不要不急の外出を自粛してください。
→ 外部からの命令ではなく、あくまで自分の判断で控えることを示します。
使い分けまとめ
言葉 | 意味 | ニュアンス |
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見合わせる | 実施を一時的に控える | 状況次第で再開の余地あり |
見送る | 実施しないことに決める | 今回はやらないと決定 |
延期 | 実施時期を後ろにずらす | 実施は確実、時期だけ変更 |
中止 | 実施を完全にやめる | 再開予定なし、断固とした決定 |
保留 | 判断を一時的に止める | 結論を先送りにする |
自粛 | 自発的に控える | 社会的・道徳的な判断による |
まとめ
「見合わせる」は便利な表現ですが、似た言葉と比べると曖昧で含みのある表現です。相手に明確な状況を伝える必要がある場合は、「延期」「中止」「保留」など、より具体的な言葉を選ぶと誤解が避けられます。逆に、まだ結論を出せないときには「見合わせる」がちょうどよいクッションになることもあります。状況や相手との関係に応じて、適切な言葉を選んで使い分けましょう。