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霧(きり)靄(もや)霞(かすみ)の区別:それぞれの気象学的定義とは?

名称

ロンドンは霧のイメージが強い街として知られています。映画で見るロンドンの霧に包まれた風景は幻想的で魅力的ですが、実生活では霧が原因で衣服が湿ったり、視界が悪くなって不便を感じることもあります。

霧と同じように、靄や霞もしばしば混同されがちです。これらは見た目が似ているため、区別が難しいことがあります。では、これら三つの現象は具体的にどのように異なるのでしょうか?

美しい景色を作り出すこともあれば、時には困った状況を引き起こすこともある霧、靄、霞。この記事では、これら三つの現象の特性と相違点について解説します。

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霧が発生する条件:空気中の水蒸気が飽和点を超えた結果

霧は、空気中の水蒸気が様々な原因で飽和点を超え、水滴として凝結した状態を指します。

空気に含まれる水分は通常、水蒸気の形で存在し、その量は湿度で表されます。しかし、空気中の水分が急速に増加し湿度が100%に近づくと、水蒸気は微細な水滴に変化します。

霧の中を通る際に感じる衣服や髪の湿りは、これら微細な水滴が物体に付着するためです。

 霧と雲:本質的には同じ現象

霧と雲は、その成り立ちにおいて基本的に同じ現象です。

雲は、空中に浮遊する微小な水滴の集まりであり、その生成過程は霧が形成される過程と一致します。このため、飛行機が雲を通過する際には、霧の中を歩いているような視界の不鮮明さを体験します。

地上で形成される霧を高所から観察すると、それがまるで雲のように見えることがあります。同様に、山にかかった雲は、その中を歩くと実際には霧であることが感じられます。

気象学における霧の定義

気象学では、日本の天気予報において霧は以下のように定義されます。

  • 空中に漂う微細な水滴によって、視界が1キロメートル未満に限定される状態

ここでいう視程は、水平方向において物体が見える最大の距離を指します。

従って、視程が1キロメートル以上の場合、たとえ霧のように見えても、正式には霧とは認定されません。地上において視界が約100メートル以下、または海上で500メートル以下に制限される場合は「濃霧」と呼ばれます。

このような状況が交通に影響を及ぼす可能性があると判断された際には、「濃霧注意報」が出されます。

日本においては、特に北海道の釧路市が霧が多く発生することで知られています。

 

靄(もや)の特徴:霧に比べて薄い

靄は、霧と同様に空中に浮遊する微細な水滴から成りますが、その密度や視界に与える影響に違いがあります。

霧と比較して、靄はより薄く、視界を比較的少なく妨げる特性があります。靄は霧が薄くなり始めた時、すなわち霧が晴れゆく過程でよく見られる現象です。

靄の気象学上の区分

気象学では、靄は視程によって霧と区別されます。

  • 視程が1キロメートル以上10キロメートル未満の状態を指し、空中に微細な水滴が浮遊している時を言います。

天気予報においては、霧の発生については頻繁に報告されますが、靄の状態について特別に言及されることは少ないです。視程が1キロメートル未満に狭まった場合に「霧が発生している」と報じられます。

 

霞の意味:景色がぼやける現象の総称

霞は、周囲の景色がぼやけて見える状態を指す言葉であり、その原因は霧や靄だけに限らず、黄砂や煙など様々な要因によっても生じます。

このため、霞は霧や靄と異なり、特定の気象現象を指す用語としては使用されません。気象学では霞に対する明確な定義は存在せず、その用語は通常使われていません。

文学における季語に使われる霞

天気予報では用いられない霞ですが、文学の世界では豊かな表現として頻繁に登場します。

中国古典では、夜明けに霧がかかり、朝日に照らされる様子を「朝霞」として詠みました。同様に、朝焼けや夕焼けによって赤く染まる霧や雲を霞と称する記録もあります。

この表現は日本にも伝わり、時間に関わらず視界がぼやける状態を「霞」と呼ぶようになりました。和歌や俳句などの文学作品では、霞が頻繁に題材として扱われます。

特に俳句では、霞は春の季語として位置付けられています。実際に春の夜明けや日没時には、景色がぼやけがちです。

対照的に、「霧」は秋の季語として用いられ、ぼやけた景色を表す際にも使われます。しかし、霞が季語として特定の季節に限定されることはなく、その点で霧や靄とは一線を画しています。

 

視界で区別することも

霧、靄、霞は、それぞれの漢字が似ているため、混同しやすい言葉です。霧と靄は意味合いとしては類似しており、霞も実際には霧や靄の一形態を指すことがあります。

これらを区別する一つの方法として、視界の程度に着目することが挙げられます。

  • 視界がほとんどない状態を「霧(きり)」
  • 視界がある程度確保されている状態を「靄(もや)」
  • 特定の気象用語としてではなく、あいまいな視界の状態を示す表現として「霞(かすみ)」

これらの言葉を、視界の差異に基づいて使い分けることで、それぞれの状態をより正確に表現することができます。

このように、やや複雑な関係性を持つこれらの現象を、視界の違いに注目して理解し、適切に使用することが望ましいです。

霧、靄、霞の特徴と相違点のまとめ

最後に、霧、靄、霞のそれぞれの性質と相違点について簡潔に要約します。

霧(きり)

  • 空気中の水蒸気が冷却されて飽和し、微細な水滴に変わった状態。
  • 雲の発生と同様のプロセスにより、高所では雲、地上では霧として現れる。
  • 気象学では、視程が1キロメートル未満に制限される状態を指す。
  • 地上での視界が約100メートル以下、海上では500メートル以下の場合、「濃霧」と称される。
  • 文学では、特に秋の景色を表現する季語として用いられる。

靄(もや)

  • 霧に似ているが、視界が比較的良好な状態。
  • 気象学での定義によれば、視程が1キロメートル以上10キロメートル未満の状態を示す。
  • 霧よりも軽度の視界制限を引き起こす。

霞(かすみ)

  • 霧や靄、さらには煙や黄砂による周囲の景色のぼやけを総称。
  • 気象学上の用語としては分類されず、天気予報での使用はない。
  • 文学、特に俳句では春の情景を描く際の季語として利用される。

これらの要約を通じて、霧、靄、霞の間の微妙な違いを理解し、各現象が持つ独自の特性を適切に識別することができます。

 

 

 

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