「忘れがち」「風邪になりやすい」――どちらも“そうなる傾向がある”という点では似た表現ですが、実際には微妙に意味や使い方に違いがあります。
この記事では、「〜しがち」と「〜になりやすい」の違いや使い分け、さらにはそれぞれの持つ印象や使用例をわかりやすく解説します。
「〜しがち」とは?
「〜しがち」は、「〜することが多い」「つい〜してしまう」という意味で、望ましくない傾向や癖に使われることが多い表現です。
特徴:
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話し手の主観や反省がこもることが多い
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“つい”“気づかずに”といったニュアンス
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行動や感情に対して使われる
例文:
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忙しいと食事を抜きがちになる。
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注意されると落ち込みがちだ。
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スマホを見ながら歩きがちだから気をつけよう。
「〜しがち」は、自分や他人のありがちな行動パターンに言及する時に便利です。ただし、ネガティブな文脈になることが多いため、配慮が必要です。
「〜になりやすい」とは?
「〜になりやすい」は、「ある状態に変化しやすい、影響を受けやすい」という意味で、客観的な傾向や体質・環境の影響を表す際に使われます。
特徴:
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中立的・客観的な表現が多い
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状態や現象に対して使う
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医療・気象・心理など幅広い分野で使用される
例文:
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この薬は眠くなりやすいので注意が必要です。
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冬は風邪になりやすい時期だ。
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ストレスをためやすい性格といわれた。
「〜になりやすい」は結果や変化に焦点を当てた言葉です。「しがち」よりもやや専門的・説明的に聞こえるのが特徴です。
並べて比較してみよう
比較項目 | 〜しがち | 〜になりやすい |
---|---|---|
意味 | つい〜してしまう傾向 | 状態や結果に変化しやすい |
主観 or 客観 | 主観寄り | 客観寄り |
ニュアンス | ネガティブ・軽い反省を含むことが多い | 中立・やや説明的 |
用いる対象 | 行動や態度 | 状態・症状・変化 |
使用例 | 忘れがち、怒りがち、焦りがち | 怒りやすい、疲れやすい、ケガをしやすい |
「〜しがち」と「〜になりやすい」使い分けのコツ
迷ったときは…
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自分の行動パターンに言及するなら → 「〜しがち」
→ 例:「予定をすぐ忘れがちなんだよね」 -
体質や状況、環境の影響が関係しているなら → 「〜になりやすい」
→ 例:「体が冷えやすくて風邪を引きやすい」
より丁寧・説明的に伝えたいなら「〜になりやすい」を選ぶ
医療・教育・ビジネスなどの場では、「〜になりやすい」のほうが冷静で分析的な印象を与えやすいです。
よくある混同表現と注意点
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✕「太りがちな体質」 → ◯「太りやすい体質」
→ 「体質」のような客観的な条件には「〜しがち」ではなく「〜になりやすい」が自然です。 -
✕「この靴は脱げがちだ」 → ◯「脱げやすい」
→ 物や仕組みに関する傾向も「〜になりやすい」が適切。
まとめ
「〜しがち」は“ついやってしまう”という軽いクセや傾向、「〜になりやすい」は“ある状態に変わりやすい”という客観的な特性や結果に焦点を当てた表現です。
どちらも「傾向」を表しますが、ニュアンスや使う対象が異なるため、文脈によってしっかり使い分けることが大切です。
「しがち」にはちょっとした反省や気づき、「になりやすい」には事実や傾向への配慮が含まれている――この違いを意識すると、言葉の使い方が一段と上達するはずです。