多くの読書ファンは、好みのジャンルに特に惹かれるものです。一方で小説に夢中になる人もいれば、エッセイの優美な文体に魅了される人もいます。
また、普段から書籍を読む機会が少ない人でも、新聞や雑誌のコラムは気軽に楽しむことが多いです。
それでも、コラムとエッセイは似ているようでいて、実際にはいくつかの異なる特徴があります。この記事では、両者の文学的形式の違いを深く掘り下げてご紹介しますので、是非参考にしてください。
「コラム」の概要
コラムの意味とその歴史
「コラム」という単語は元々、ラテン語で「柱」という意味を持つ言葉に由来しています。この言葉はやがて、立体的な柱を表す用語としても使われるようになりました。
新聞や雑誌の界隈で使われる際には、縦に並んだ記事を分類するための用語として採用されています。時間を経て、この用語は「主に意見を含むニュース以外の記事を収める特別なセクション」という意味で広く使われるように変わりました。
最終的には、意見や評論を表す一般的な表現として「コラム」という言葉が定着しました。
コラム執筆の要点
コラムを執筆する際には、特定のトピックに沿って筆者の考えを明確な意見として提示することが求められます。
執筆プロセスにおいて重要なのは、「どうしてそう思うのか」という考えの背後にある理由や動機を、事実に裏打ちされた客観的な説明を通じて展開することです。コラムは一般的に多くの読者に向けて書かれるため、誰もが理解しやすく、説得力のあるクリアな文章を心掛ける必要があります。
また、コラムは通常、一つの記事で完結する形式が取られることが多く、シリーズものとして連載するよりは、各回独立したテーマで構成されることが推奨されます。
コラムのスタイル：匿名と記名
コラムには匿名で書かれるタイプと、作者がはっきりと示された記名タイプがあります。
匿名で書かれるコラムの代表例には、新聞の朝刊一面に掲載されるものがあります。具体的には、以下のようなコラムが挙げられます。
- 朝日新聞の「天声人語」
- 読売新聞の「編集手帳」
- 毎日新聞の「余禄」
- 産経新聞の「産経抄」
これらのコラムは、作者の名前が公開されずに発表される典型的な例です。
一方、記名タイプのコラムでは、筆者の名前がはっきりと記載され、その人物の意見や主張が直接的に表現されます。このタイプのコラムは、鋭い意見を通じて議論を呼びかけたり、時には社会問題を提起することもあります。異なる視点を持つ人々との議論を引き起こすこともあり、これがコラムの魅力の一つとされています。
コラムを専門に書く人々は「コラムニスト」と呼ばれ、テレビのコメンテーターとして活動する者もいます。彼らの意見をコラムニストの視点から聞くと、新たな発見があるかもしれません。
「エッセイ」の定義
エッセイの特性
エッセイは、「随筆」とも呼ばれる文学の一形態で、著者が個人的な経験や知識を基に、自らの思考や感情を文章にして表現するものです。
エッセイには発表の場やテーマに特定の制限は設けられていないため、多岐にわたる内容が展開されます。このジャンルは、フランス語の「essai（試み）」という言葉から名付けられました。
この「試み」とは、特定のトピックに対して文学的な手法を用いて意見や考察を織り交ぜながら論じることを指します。本来は、深く思索を重ねた末にどのような結論に達するかを綴る、論文に類似した形式をとります。
特に欧米では、エッセイが学術的な要素を含むことが一般的であり、その学問的な特性が強調されることが特徴です。
清少納言の「枕草子」は日本におけるエッセイの代表作
日本におけるエッセイ（随筆）の歴史は長く、最も初期の例としては清少納言による「枕草子」が挙げられます。
「枕草子」は四季の移り変わりや日々の生活に関する洞察を綴った作品で、清少納言の観察眼と文才が光ります。このほかにも鴨長明の「方丈記」や吉田兼好の「徒然草」など、古典的なエッセイ作品が多数存在します。
江戸時代には、様々な階層の人々が随筆を執筆し始め、日記に近い形式をとることが多くなりました。これにより、現代ではエッセイがより身近な読み物として楽しまれるようになりました。
現代では、プロの随筆家やエッセイストが活躍しており、彼らがテレビのコメンテーターとして出演することもしばしばあります。日本の文化や文学において、エッセイはユニークな地位を確立しています。
コラムとエッセイの間で：自己表現の異なるアプローチ
コラムとエッセイはよく混同されがちですが、両者は明確な特性を持っています。
「コラム」は通常、新聞や雑誌で見られ、意見や感想を述べることに焦点を当てています。これに対し、「エッセイ」は個人の体験や思考を基にした感想や考察を自由な形で綴るもので、特定の発表の場を必要としません。
両者は意見や感想を表現する点で共通していますが、内容のアプローチや精度に差があります。コラムは時事的な内容や公共の問題に対する意見が中心であり、一方エッセイは個人的な体験や深い思索が主体です。
自らを表現する際には、どちらのスタイルが適しているかを見極めることが重要です。コラムでは公共的な問題についての意見を、エッセイでは個人的な経験や感情を中心に描くことが一般的です。
コラムとエッセイの違い：まとめ
コラムとエッセイは一見すると似ているように見えますが、実際にはいくつかの顕著な違いが存在します。
コラム:
- コラムは主に新聞や雑誌で掲載され、時事的な内容や公共の問題に対する意見が主体です。
- 読者に何かを伝えることを目的としており、しばしば具体的なテーマに基づいて書かれます。
- 匿名または記名での発表があり、筆者の意見が明確に表されることが多いです。
エッセイ:
- エッセイは「随筆」とも称され、個人の体験や思考に基づいて執筆されます。
- 発表の場所に特に制限はなく、形式も自由です。
- 個人的な体験や感情を中心に据え、読者に深い自己表現を提供します。
- エッセイは文学的な性質を持ち、内省や深い思索が強調される傾向にあります。
これらの違いを把握することで、各ジャンルの理解が深まり、自分の表現方法を選ぶ際の参考にもなります。
