電車のアナウンスでよく耳にする「上り（のぼり）」と「下り（くだり）」。
普段なんとなく乗っている人でも、
「あれ？ 上りってどっちだっけ？」
と迷ったことがあるのではないでしょうか。
実はこの言葉、地域によって意味が変わることがあります。
東京では“東京方面へ向かう＝上り”という感覚が普通ですが、
大阪では“大阪方面へ向かう＝上り”と案内される路線もあるのです。
今回は、この“方向を表す日本語”の微妙な違いを、
地域の視点・鉄道会社の基準・歴史背景を交えて解説します。
「上り」＝“中心へ向かう列車”
上り（のぼり）
→ 都市の中心・拠点・主要駅へ向かう電車
鉄道の世界では、
上り＝中心へ向かう
下り＝中心から離れる
という基本概念があります。
では、その“中心”とはどこなのか？
東京圏：上りは「東京へ向かう列車」
JR東日本・首都圏の私鉄ではほぼ共通。
上り＝
-
東京駅
-
新宿
-
渋谷
-
池袋
-
上野
など“都心”へ向かう方向。
下り＝
都心から外へ向かう列車。
例：京王線
-
新宿行き → 上り
-
八王子方面 → 下り
例：中央線
-
東京方面 → 上り
-
高尾方面 → 下り
首都圏は「東京＝中心」という明確な軸があるため、
ルールが分かりやすい世界です。
大阪圏：上りは「大阪へ向かう列車」
関西の鉄道では、中心が“大阪”に置かれます。
上り＝大阪・梅田など中心部へ
下り＝郊外へ向かう列車
例：阪急
-
梅田行き → 上り
-
宝塚・京都・神戸方面 → 下り
例：JR西日本
-
大阪行き → 上り
-
京都・神戸・和歌山方面 → 下り
ただし、関西は東京ほど一本化されておらず、
会社ごとに中心駅が微妙に違うという特徴があります。
地域差が生まれる理由：中心が“地理ではなく文化圏”で決まる
実は、上り／下りは
地図上の北・南・東・西とは全く関係ありません。
判断基準になっているのは、
-
経済の中心
-
文化の中心
-
人が集まる巨大ターミナル
-
その鉄道会社にとっての拠点
つまり、
“都会へ向かう＝上り”
という文化的な方向感覚が根底にあります。
そのため、
東京と大阪では“中心が違う”ため解釈が変わります。
「あれ？ 逆じゃない？」が起きる例
例：名古屋の人が東京の電車に乗る場合
名古屋では名古屋駅が中心のため
-
名古屋へ行く＝上り
と解釈しがち。
しかし東京の路線では
-
東京へ行く＝上り
となる。
旅行者が迷いやすいポイント。
電車以外では「上り／下り」の使い方が違うことも
新幹線
-
東京へ向かう列車＝上り
-
東京から離れる列車＝下り
（全国共通ルール）
高速道路
-
東京に近づく方向＝上り線
-
東京から離れる＝下り線
（東名・名神など）
鉄道よりも“東京基準”が強く働く世界。
まとめ：上り・下りは「中心がどこか」で決まる
| 地域 | 上り | 下り |
|---|---|---|
| 東京圏 | 東京方面へ | 郊外へ |
| 大阪圏 | 大阪方面へ | 外へ |
| 名古屋圏 | 名古屋へ | 郊外へ |
| 新幹線 | 東京へ | 東京から離れる |
上り＝中心へ
下り＝中心から離れる
地図ではなく、
文化圏・鉄道会社ごとの“中心”が基準になることが
誤解の原因になっているのです。
