相手から褒められたり評価されたりしたときに、自分を少し引き下げて返す表現が数多くあります。その代表的なものが「それほどでも」。相手の評価を完全に否定せずに、柔らかく控えめに答える表現です。
ですが、似たような意味を持つ言葉に「たいしたことはない」「大したものではありません」「別にそうでもない」「まあまあです」「そんなに」などがあります。一見すると同じように使えそうですが、実はニュアンスや場面によって適切さが異なります。
本記事では「それほどでも」を中心に、類似表現の意味と使い分けを詳しく解説します。
「それほどでも」の意味と特徴
辞書的意味
「それほどでも」とは、相手の評価を受け止めつつ、控えめに否定する表現。
特徴
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相手の言葉を全面的に否定しない
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謙遜を表す柔らかい言い回し
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ビジネスでも日常でも違和感なく使える
例文
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「絵が上手ですね!」
→「いえ、それほどでも…」
👉 謙虚に振る舞いたいときの万能表現。
似た言葉との比較
「たいしたことはない」
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意味:大きな価値や重要性はない。
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ニュアンス:カジュアルでくだけた印象。自己卑下が強めに出る。
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例文:「試合で活躍したね!」 → 「いや、たいしたことはないよ。」
👉 謙遜の度合いを強調するときに使えるが、ビジネスでは砕けすぎることもある。
「大したものではありません」
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意味:特別なものではない、相手に対して控えめに表現。
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ニュアンス:「それほどでも」よりフォーマルで丁寧。
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例文:「素敵な贈り物ですね」 → 「いえ、大したものではありません。」
👉 改まった場やビジネスシーンで好まれる表現。
「別にそうでもない」
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意味:相手の評価を軽く否定する。
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ニュアンス:カジュアルで少し素っ気ない響き。
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例文:「君って人気あるよね」 → 「別にそうでもないよ。」
👉 若者言葉にも多いが、謙遜というより「否定的返答」に近い。
「まあまあです」
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意味:ほどほど、平均的。
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ニュアンス:控えめに返す柔らかい表現。自分の実力を高めず、程よく下げる。
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例文:「テストどうだった?」 → 「うん、まあまあです。」
👉 フランクで親しみやすい言い回し。会話を和ませるときにも使える。
「そんなに」
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意味:相手の評価を軽く和らげる。「そこまでではない」というニュアンス。
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ニュアンス:「それほどでも」に最も近い日常的な表現。
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例文:「君って詳しいね!」 → 「そんなに知ってるわけじゃないよ。」
👉 気軽に使える便利な言葉だが、ビジネスの場では「それほどでも」の方が無難。
違いを整理
表現 | ニュアンス | 使用場面 |
---|---|---|
それほどでも | 謙遜しつつ柔らかに否定 | 日常会話・ビジネスどちらでも可 |
たいしたことはない | 自己卑下・くだけた | 親しい間柄・日常会話 |
大したものではありません | 丁寧・フォーマル | 改まった場、ビジネス |
別にそうでもない | 否定的・素っ気ない | カジュアル、若者会話 |
まあまあです | 控えめ・柔らかい | 気軽な会話、親しい関係 |
そんなに | 「それほどでも」に近い自然さ | 日常会話全般、ややカジュアル |
誤った使い方に注意
「それほどでも」とその類似表現は便利ですが、使い方を誤ると意図とは逆の印象を与えてしまうことがあります。謙遜のつもりが嫌味に聞こえたり、丁寧さが足りず軽く見られたりする場合があるため、注意が必要です。
「それほどでもないですけど!」 → 強調しすぎに注意
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問題点:「!」をつけたり、声を大きくして強調すると、「謙遜」ではなく「否定」や「自己卑下」に聞こえる場合があります。場合によっては「嫌味」に感じられることも。
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例文
❌ 「いえいえ、それほどでもないですけど!」
⭕ 「いえ、それほどでもありません」 -
ポイント:ビジネスやフォーマルな場では、余計な強調を避け、落ち着いた言い方が好印象。
「大したことはないです」 → フォーマルには不向き
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問題点:くだけた言い回しであり、日常会話では自然ですが、フォーマルな場や目上の人に対して使うと「軽い」「適当」という印象を与えることがあります。
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例文
❌ 「この成果は大したことはないです」
⭕ 「この成果は大したものではありません」 -
ポイント:「大したものではありません」のほうが丁寧で、改まった場にふさわしい。
「別にそうでもない」 → 否定的・冷たい印象
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問題点:「別に」という副詞が否定を強めるため、謙遜ではなく「突き放し」「拒絶」に聞こえやすい。ビジネスや初対面の相手との会話では不適切になりがち。
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例文
❌ 「いや、別にそうでもないです」
⭕ 「いえ、それほどでもありません」 -
ポイント:親しい友人同士なら自然でも、ビジネスの場では誤解を招きやすい。
ポイントとまとめ
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「それほどでも」 → 謙遜に適しているが、強調しすぎは逆効果。
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「大したことはない」 → カジュアルな会話に向くが、改まった場では不適切。
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「別にそうでもない」 → 日常では軽い否定で使えるが、ビジネスでは冷たく響く。
👉 相手との関係性(親しい友人/ビジネス/目上の人) と 場面(カジュアル/フォーマル) に合わせて表現を選ぶことが大切です。
まとめ
「それほどでも」は謙遜や控えめな否定を柔らかく表す便利な表現ですが、似た言葉にはそれぞれ微妙なニュアンスの違いがあります。
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それほどでも:柔らかく自然な謙遜。
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たいしたことはない:くだけた卑下。
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大したものではありません:丁寧で改まった謙遜。
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別にそうでもない:やや素っ気ない否定。
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まあまあです:軽めでフランク。
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そんなに:自然な日常表現。
👉 シーンに応じて使い分ければ、相手に与える印象も大きく変わります。