「インバウンドは観光のこと?」
「アウトバウンドって営業用語?」
「それとも物流の話?」
こんなふうに、人によって違う意味で使っているカタカナ語ってありますよね。
その代表例とも言えるのが、「インバウンド」と「アウトバウンド」。
どちらもよく耳にする言葉ですが、実は業界や文脈によって意味がガラッと変わるのが特徴なんです。
この記事では、
-
「インバウンド」と「アウトバウンド」の基本的な意味
-
観光・営業・物流など、業界ごとの使い方の違い
-
どっちがどっち?の混乱をスッキリ整理
などを、わかりやすく解説していきます。
基本の意味:インバウンド/アウトバウンドの語源と使い方
「インバウンド」と「アウトバウンド」は、もともと**英語の前置詞 in / out + bound(〜向きの)**からできている言葉です。
ざっくり言えば、「どちらの方向に向かっているか」という“動きの向き”を表します。
インバウンド(inbound)=中に入ってくる
「イン(in)」=内側、「バウンド(bound)」=方向・向かっている、という意味から、
外から内に向かってくる動きを指します。
イメージとしては…
-
「外から日本にやってくる観光客」
-
「お客様からこちらにかかってくる電話」
-
「倉庫に納品される荷物」
など、「こちら(自分側)に向かってくるもの」がインバウンドです。
アウトバウンド(outbound)=外に出ていく
一方で、「アウト(out)」=外側、「バウンド(bound)」=方向、という組み合わせで、
内から外に向かって出ていく動きを表します。
イメージとしては…
-
「日本から海外に旅行する日本人」
-
「営業担当者から電話やメールでアプローチする行為」
-
「倉庫から出荷される商品」
など、「こちら(自分側)から外へ向かうもの」がアウトバウンドです。
このように、インバウンド/アウトバウンドの基本は、
“自分たちの位置から見て、外から来るのか、外へ出すのか”という方向性の違いなんですね。
次からはこの基本をもとに、業界別の具体的な使われ方を見ていきましょう。
観光業界での使い方
まずは「インバウンド」「アウトバウンド」がもっとも広く知られるようになったきっかけ、
観光業界での意味の違いを見てみましょう。
インバウンド観光=訪日外国人旅行
観光業界において「インバウンド」といえば、
海外から日本を訪れる外国人観光客(訪日客)を指します。
具体例:
-
「インバウンド需要が回復してきた」=外国人観光客が増えてきた
-
「インバウンド対応の多言語メニューを導入した」=訪日外国人向けに整備
日本では、特に2010年代以降、外国人旅行者を受け入れるインバウンド観光が注目され、
地方の観光地や商業施設、鉄道会社などでも対応が進められてきました。
アウトバウンド観光=日本人の海外旅行
一方、「アウトバウンド」とは、
日本から海外へ出かける日本人旅行者を意味します。
具体例:
-
「コロナ前はアウトバウンド需要が旺盛だった」
-
「アウトバウンド向けの海外パッケージツアーを販売する」
旅行会社などでは、
-
海外からの旅行客=インバウンド
-
海外へ向かう旅行者=アウトバウンド
と分けて商品企画や販促をしています。
ポイントまとめ
用語 | 意味 | 主語 |
---|---|---|
インバウンド | 海外から日本へ来る観光(訪日外国人) | 外国人 |
アウトバウンド | 日本から海外へ行く観光(海外旅行) | 日本人 |
このように、観光業界では「どこからどこへ」がはっきりしているため、
比較的わかりやすい使い分けになっています。
営業・マーケティング分野での使い方
営業やマーケティングの現場でも、「インバウンド」「アウトバウンド」という言葉はよく使われます。
ただしこちらでは、“人の移動”ではなく、コミュニケーションの出入りやアプローチの仕方を指すのがポイントです。
インバウンド営業・マーケティング=相手から来てもらう
この場合の「インバウンド」とは、見込み客(リード)がお問い合わせや資料請求などで“自発的に”やってくる状態を指します。
具体例:
-
「Webサイトからの問い合わせ」
-
「資料請求やセミナー申し込み」
-
「SNSやコンテンツを通じて顧客が興味を持つ」
つまり、顧客の行動を“待つ”スタイルの営業です。
マーケティング施策と連動することが多く、
「インバウンドマーケティング(=価値ある情報で興味を引く手法)」という表現も使われます。
アウトバウンド営業=こちらから仕掛ける
一方の「アウトバウンド営業」は、企業側から積極的にアプローチする営業スタイルです。
具体例:
-
テレアポ(電話営業)
-
飛び込み営業
-
ダイレクトメール送付
-
メールマーケティングの一斉配信
顧客が動く前に、こちらから情報や提案を“届けに行く”タイプの営業というわけですね。
ポイントまとめ
用語 | 意味 | 主体 |
---|---|---|
インバウンド | 顧客の方から自発的に接触してくる | 顧客(受け身) |
アウトバウンド | 企業が顧客に向けてアプローチを仕掛ける | 企業(能動的) |
営業やマーケティングの現場では、「効率」「信頼性」「コスト」などの観点で
インバウンドとアウトバウンドの戦略を使い分けているケースも多く見られます。
物流・通信の分野での使い方
「インバウンド」と「アウトバウンド」は、物流業界やコールセンターなどの通信業界でもよく使われています。
ここでは、「物の動き」や「電話の方向」を基準に使い分けられているのが特徴です。
物流業界での使い方
物流・倉庫管理の現場では、商品の出入りに関して「インバウンド/アウトバウンド」を使います。
インバウンド物流
= 入荷・納品されてくる側の動き(外から倉庫に入ってくる)
-
メーカーから倉庫への商品搬入
-
仕入れ先からの納品を受けるプロセス
-
入庫検品や保管作業が含まれる
アウトバウンド物流
= 出荷・配送される側の動き(倉庫から外に出ていく)
-
倉庫からお客様への商品発送
-
出荷・梱包・配送手配などを含む
つまり、倉庫を基準にして「入ってくる=インバウンド」「出ていく=アウトバウンド」というシンプルな使い方です。
● 通信・コールセンター業界での使い方
通信分野では、「電話の発信元」が基準になります。
インバウンドコール(受信対応)
= お客様から企業にかかってくる電話
-
お問い合わせ・クレーム・予約受付など
-
コールセンターでの“受け”の業務
アウトバウンドコール(発信対応)
= 企業側からお客様に電話をかける
-
セールスコール・アンケート調査・フォロー連絡など
-
“かける側”の能動的な対応
ポイントまとめ
業界 | インバウンド | アウトバウンド |
---|---|---|
物流 | 倉庫への入荷 | 倉庫からの出荷 |
通信(電話) | お客様 → 企業(受信) | 企業 → お客様(発信) |
このように、「どこからどこへ?」という視点を意識すると、
言葉の意味がよりクリアに理解できるようになります。
まとめ:言葉だけじゃなく「どの業界か」で意味が変わる
「インバウンド」と「アウトバウンド」は、もともとは「入ってくる」「出ていく」という動きを表す英語由来のカタカナ語。
ただしその意味は、使われる業界や文脈によって大きく変わるのが特徴です。
業界別のざっくり使い分け
-
観光業界:
インバウンド=訪日外国人
アウトバウンド=日本人の海外旅行 -
営業・マーケティング:
インバウンド=顧客から来る問い合わせ
アウトバウンド=企業からのアプローチ -
物流・コールセンター:
インバウンド=入荷/受信
アウトバウンド=出荷/発信
こうして見ると、「誰が動いて、どこへ向かうか」という**“視点”がカギ**になっているのがわかります。
つまり、「インバウンド/アウトバウンド」という言葉を見かけたときは、
“どの業界の話か?”をまず意識することが、正しく理解する近道です。
一見難しそうなカタカナ語も、視点をちょっと変えるだけでぐっと身近になるもの。
次にこの言葉を聞いたときは、ぜひ“方向”と“業界”に注目してみてくださいね。