「研修」と「訓練」、表面的には非常に似ていると感じられるかもしれませんが、実際には両者の間には大きな違いが存在します。
見た目には似通っているこれらの言葉ですが、詳しく見ていくと、その違いは意外にも大きいものです。この記事では、その具体的な違いを3つのポイントに分けて解説していきます。
「研修」と「訓練」の意味の違い
まずは、「研修」と「訓練」の意味の違いについて簡潔に説明します。
「研修」は、知識や技能の向上を目的として、個人が学習や実習を通じて自らを高めるプロセスです。
一方で「訓練」は、特定の能力や技術を高い水準に引き上げることを目的に、指導者が教える形で行われます。
これらは一見似ているように見えますが、目的と実施の形式に明確な違いがあります。
次に、これらの違いをさらに詳しく解説していきます。
「研修」と「訓練」の微妙な意味の違い
「研修」と「訓練」は、どちらも技術が身につくという点で共通しています。
しかし、「研修」は主に技術を身につけたり、既存の技術を伸ばすことを目的としています。これに対して「訓練」は、特定の技術を高い水準まで引き上げることが目的です。
この違いから、「訓練」は「研修」よりも一般的に高度な技術を身につけることを求められ、そのプロセスはより厳格なものになりがちです。
例えば、「災害対策研修」では、参加者は避難経路の知識や防火扉の位置などを学びます。一方で、「災害対策訓練」では、実際の避難訓練を通じて、緊急時の具体的な行動方法を身につけることになります。これは一例ですが、研修と訓練の違いを示しています。
「研修」と「訓練」、「する側」「させる側」の違い
「研修」と「訓練」の間には、参加者の立場に関する大きな違いも存在します。
「研修」では参加者が主体的に「身につける」ことを目的としています。これは「する側」と言えるでしょう。参加者は自らの意志と努力により、新しい知識やスキルを習得しようとします。
一方、「訓練」は参加者に特定の能力や技術を「身につけさせる」ことを目的としています。こちらは「させる側」の立場にあり、訓練を実施する側が計画的に、しっかりとしたスキルを身につけさせるための方法やプログラムを提供します。
このように、「研修」と「訓練」は、実施する目的と参加者の役割の面で大きく異なります。
「研修」は期間がポイント
「研修」は通常、あらかじめ定められた一定期間にわたって特別に実施されるものです。これは、気が向いたときに突如として行われるようなものではなく、事前に計画された日程に従って短期集中で行うのが一般的です。研修は日常的な活動ではなく、特定の期間に集中してスキルや知識の向上を目指すためのものです。
一方で、「訓練」にはこのような期間に依存する性質は特にありません。訓練は必要に応じていつでも実施可能で、定められた期間が必ずしも存在するわけではないため、より柔軟に行われることが多いです。
「研修」と「訓練」の違いを整理
ここで「研修」と「訓練」の違いを改めて整理しましょう。
「研修」は主に技術や知識を身につけたり、既存の技術をさらに伸ばすことを目的としています。このプロセスは通常、期間限定で特別に計画され、自発的な学習が中心です。
一方、「訓練」は特定の技術や能力をより高い水準に到達させることを目的として行われます。ここでは指導者が積極的に技術を身につけさせるための指導を行うことが特徴です。
このように、「伸ばす」という目的と「高い水準への到達」という目的の違い、自発的に「身につける」か指導者によって「身につけさせる」かの違いが、「研修」と「訓練」を区別する重要なポイントとなります。
「研修」と「訓練」の辞書での意味
次に、辞書で定義されている「研修」と「訓練」の意味を確認しましょう。
「研修」の辞書での意味
【研修】とは、特定の分野の知識や技能を高めるために、一定期間特別に学習や実習を行うこと。また、そのための講習を指します。例えば「新入社員の研修」があります。 引用元：旺文社国語辞典
この定義から、「高める」という目的と「一定期間特別に」という実施形態が重要なポイントであることがわかります。
「訓練」の辞書での意味
【訓練】とは、ある能力・技術などが身につくように、実際に練習させて教えること。例として「避難訓練」が挙げられます。 引用元：旺文社国語辞典
一部の辞書では「体得させる」とも記載されており、これは訓練が高い水準への技術習得を目指していることを示しています。
これらの定義を見ると、研修と訓練の違いがより明確になり、それぞれがどのような目的と手法で行われるかが理解しやすくなります。
「研修」と「訓練」の使い方
「研修」と「訓練」の違いを理解するために、これらの用語がどのように使われるか、具体的な例文を通して紹介します。
「研修」の使い方
- 「研修会の報告書を提出した」と言うときは、特定のテーマについて学んだ内容をまとめた文書を指します。
- 「研修医でありまだ医師の前の身分です」という表現は、正式に医師として認定される前の実習医を指します。
- 「入社していきなり新入社員研修が開催される」では、新しく入社した社員が職場での基本的な知識や技能を学ぶ期間を表しています。
- 「日本薬剤師研修センターへ行く」とは、専門的な薬剤師としてのスキルを高めるための学習施設を訪れることを意味します。
「訓練」の使い方
- 「実際の状況で行われる実地訓練」とは、具体的な緊急事態に対応するための実際の演習を指します。
- 「教育訓練給付制度を活用する」では、職業訓練を受けることで得られる政府の経済的支援に言及しています。
- 「警察学校では様々な訓練が行われる」というのは、警察官として必要な技能や体力を養うための厳しい訓練が含まれます。
- 「新人の乗務員が鉄道の訓練車に乗る」という表現は、新しく採用された乗務員が実際の車両操作を学ぶための訓練に参加する様子を示しています。
これらの例文から、研修が主に知識の取得やスキルの向上を目的とし、訓練が具体的な操作や行動の習得に重点を置いていることが見て取れます。
まとめ
以上が、「研修」と「訓練」の意味の違いと使い分けについての解説でした。
「研修」は技術や知識を身につける、または既存の技術を伸ばす目的で行われます。これに対し、「訓練」は特定の技術を高い水準に到達させるために実施されます。
さらに、「研修」は期間限定で特別に行われることが多く、自発的に「身につける」ことを目的とします。一方で、「訓練」は特定の技術や能力を「身につけさせる」ために計画的に行われることが特徴です。
これらの違いを理解することで、実務や教育の場面において適切な方法を選択する手助けになるでしょう。
