「責任をついきゅうする」
「利益をついきゅうする」
「真理をついきゅうする」
会話ではどれも同じ「ついきゅう」ですが、文章にすると「追及」「追求」「追究」の3つの漢字があります。
どれを使えばいいのか、迷ったことはないでしょうか。
まず、代表的な使い分けを簡単にまとめると次のようになります。
| 表記 | 意味の中心 | 代表的な使い方 |
|---|---|---|
| 追及 | 追い詰めて問いただす | 責任を追及する |
| 追求 | 目的のものを追い求める | 利益・幸福を追求する |
| 追究 | 深く調べて明らかにする | 原因・真理を追究する |
覚え方としては、2文字目に注目するとわかりやすくなります。
- 追「及」……相手や責任に追いつき、追い詰める
- 追「求」……求めるものを追いかける
- 追「究」……深く調べ、究める
ただし、実際の日本語は「責任なら追及、利益なら追求、真理なら追究」と暗記するだけでは判断できない場合があります。
たとえば「原因をついきゅうする」は、何をしようとしているのかによって選ぶ漢字が変わることがあります。
この記事では、「追及」「追求」「追究」の意味と違いを整理したうえで、「原因」「美」「安全」など迷いやすい言葉ではどの「ついきゅう」を使うのか、例文を交えながらわかりやすく解説します。
「追及」とは?意味と使い方
「追及(ついきゅう)」は、相手をどこまでも追い詰めたり、責任や欠点などを問いただしたりすることを表します。
ニュースなどでよく目にするのが、
- 責任を追及する
- 疑惑を追及する
- 余罪を追及する
- 問題点を追及する
といった表現です。
「追及」の「及」には「およぶ」「届く」「追いつく」といった意味があります。
逃げようとする相手を追いかけて追いつくように、相手を逃さず、問題や責任などに迫っていくイメージを持つと覚えやすいでしょう。
「責任をついきゅうする」は「追及」
3つの「ついきゅう」の中でも、特に覚えておきたい組み合わせが「責任を追及する」です。
たとえば、
- 事故を起こした責任を追及する。
- 不祥事について経営陣の責任を追及した。
- 誰に責任があるのか、厳しく追及する。
などと使います。
ここで求めているのは「責任」というものを手に入れることではありません。
誰にどのような責任があるのかを問い、相手に迫っているため「追及」を使います。
「追求」とは?意味と使い方
「追求(ついきゅう)」は、目的とするものを得ようとして、どこまでも追い求めることを表します。
代表的なのは、
- 利益を追求する
- 幸福を追求する
- 理想を追求する
- 品質を追求する
- 可能性を追求する
などです。
「追求」の「求」は、「求める」「手に入れようとする」という意味です。
そのため、「自分が目指しているものを追い求める」というイメージを持つとわかりやすいでしょう。
「利益をついきゅうする」は「追求」
たとえば、
「企業が利益をついきゅうする」
という場合は、利益を得ることを目指しているので、
「企業が利益を追求する」
と書きます。
同じように、
- よりよい暮らしを追求する。
- 理想のデザインを追求する。
- 使いやすさを追求した製品。
- 効率性だけを追求するのは危険だ。
- 自分なりの幸福を追求する。
などと使えます。
「追求」は「良いもの」にしか使えない?
「幸福」「理想」「品質」などの例が多いため、「追求は良いものを求めるときに使う」と覚えたくなるかもしれません。
しかし、ポイントは「良いものか悪いものか」ではありません。
目的とするものを追い求めることが「追求」の中心です。
たとえば、
「利益ばかりを追求した結果、大切なものを失った」
という文章では、「利益の追求」が必ずしも肯定的に描かれているわけではありません。
「追求=良いもの」「追及=悪いもの」のように分けるのではなく、何かを求めているのか、それとも相手を問い詰めているのかで判断するほうが正確です。
「追究」とは?意味と使い方
「追究(ついきゅう)」は、わからないことや未知のことを深く調べ、その本質や真実を明らかにしようとすることを表します。
代表的な使い方には、
- 真理を追究する
- 原因を追究する
- 本質を追究する
- 理論を追究する
- 学問を追究する
などがあります。
「追究」の「究」は、「研究」「究明」などにも使われる漢字です。
奥深くまで調べて究めると考えると、「追求」との違いを覚えやすくなります。
「真理をついきゅうする」は「追究」
たとえば、
「研究者が真理をついきゅうする」
という場合、真理というものを単に手に入れようとしているというより、深く研究し、その本質を明らかにしようとしています。
そのため、一般的には、
「研究者が真理を追究する」
と書きます。
同じように、
- 事故の原因を追究する。
- 問題の本質を追究する。
- 長年にわたり生命の謎を追究している。
- 研究を通して真理を追究する。
などと使います。
「追及」「追求」「追究」の違いを比較
ここまでの3語をもう一度並べてみましょう。
| 表記 | 中心となる意味 | 判断するときのポイント | 代表例 |
|---|---|---|---|
| 追及 | 追い詰めて問いただす | 責任などに迫っているか | 責任を追及する |
| 追求 | 目的のものを追い求める | 何かを得よう・実現しようとしているか | 幸福を追求する |
| 追究 | 深く調べて明らかにする | 本質や原因などを究めようとしているか | 真理を追究する |
迷ったときは、2文字目をそのまま動詞にしてみる方法もあります。
- 及ぶ・追いつく・追い詰めるイメージ → 追及
- 求める → 追求
- 究める → 追究
この方法なら、単語の組み合わせを一つずつ丸暗記しなくても判断しやすくなります。
ただし、ここからが少し難しいところです。
「原因をついきゅうする」「美をついきゅうする」などは、何を目的としているのかによって漢字が変わることがあります。
また、「追求」と「追究」は意味が近づき、どちらを使うか一概には決めにくい場合もあります。
後半では、こうした迷いやすい「ついきゅう」を具体的な例文で比べながら見ていきましょう。
「原因をついきゅうする」は「追求」「追究」「追及」どれ?
「原因をついきゅうする」は、3つの「ついきゅう」の中でも迷いやすい表現です。
原因を深く調べ、その仕組みや本質まで明らかにしようとする場合には、「原因を追究する」が意味に合います。
- 事故の根本的な原因を追究する。
- 病気が発生する原因を追究する。
- 地球温暖化の原因を追究する。
「追究」は「究める」という字が入っているように、研究や学問など、物事を深く調べて明らかにするニュアンスの強い言葉です。
ただし、「原因」という言葉が出てきたら必ず「追究」と決まるわけではありません。
原因を探し求めるという意味では「原因を追求する」と表現されることもあります。特に、日常的な問題について原因を探す程度の文脈では、「追究」ではやや大げさに感じられる場合もあります。
また、人の責任や問題点に迫って問いただすのであれば「追及」です。
たとえば事故について考える場合でも、
原因を深く調べ、明らかにする → 原因を追究する
原因を探し求める → 原因を追求する
誰に責任があるのか問いただす → 責任を追及する
という違いがあります。
「原因」という名詞だけで漢字を決めるのではなく、その文章で「求めている」のか、「究めている」のか、「問いただしている」のかを見ることが大切です。
「美をついきゅうする」は「追求」「追究」どっち?
「美をついきゅうする」のような表現では、「追求」と「追究」のどちらがよいのでしょうか。
これは、「美」に対して何をしようとしているのかを考えるとわかりやすくなります。
たとえば、より美しいデザインや表現を目指すのであれば、
「美を追求する」
が自然です。
目標とする「美」を求め続けているからです。
一方、美とは何なのか、その本質や意味を深く考え、研究していく文脈であれば、
「美を追究する」
とすることもできます。
| 表現 | 意味の中心 | 例 |
|---|---|---|
| 美を追求する | より美しいものを求める | デザイン、製品、芸術表現など |
| 美を追究する | 美の本質を深く考え、究める | 美学、研究、思想など |
このように、対象となる言葉だけを見て「こちらが正解」と決めるのではなく、求めているのか、究めているのかを見ることが大切です。
「安全をついきゅうする」はどれを使う?
「安全をついきゅうする」なら、一般には「安全を追求する」が使いやすい表現です。
より安全な製品、より安全な環境など、安全性の向上を目指しているからです。
- より高い安全性を追求する。
- 快適性と安全性を追求した自動車。
- 作業現場の安全を追求する。
一方、安全という概念そのものを研究し、その本質や条件を深く究めるという文脈なら、「安全を追究する」と表現する余地もあります。
ここでも、
よりよい状態を目指す → 追求
本質を深く調べて究める → 追究
という違いが基本になります。
「真実をついきゅうする」は「追求」「追究」どっち?
「真実をついきゅうする」も迷いやすい表現です。
真実を求め続けるという意味に重点を置けば、「真実を追求する」と表現できます。
一方、事実を深く調査し、真実を明らかにしようとする意味を強く出すなら、「真実を追究する」という表現も考えられます。
「真実」という言葉だけで漢字が一つに決まるわけではありません。
文章の中で、
- 真実を求めているのか
- 真実を深く調べて究めようとしているのか
を考えて選ぶのがポイントです。
「追求」と「追究」は意味が重なることもある
ここまで見てきたように、「追求」と「追究」は、いつでも完全に切り分けられるわけではありません。
基本的には、
追求=求める
追究=究める
という違いがあります。
しかし、「真理」「真実」「美」などのように、求め続けることと、深く究めることが重なりやすい対象では、どちらの表現も意味が成立する場合があります。
そのため、「○○には必ず追求」「○○には絶対に追究」と、対象となる名詞だけで機械的に決めるのはおすすめできません。
迷ったら、文章を次のように言い換えてみましょう。
| 言い換えて自然なら | 選びやすい表記 |
|---|---|
| 追い詰める・問いただす | 追及 |
| 求める・目指す | 追求 |
| 調べる・究める・明らかにする | 追究 |
漢字そのものの意味に戻って考えると、判断しやすくなります。
「追及」「追求」「追究」の使い分けを例文で確認
ここからは、3つの「ついきゅう」の例文をまとめて確認してみましょう。
「追及」を使う例文
- 事故の責任を厳しく追及する。
- 議員は不正の疑惑を追及された。
- 担当者の説明に矛盾がないか追及する。
- 問題が起きた場合には、責任の所在を追及する必要がある。
- 記者は会見で問題点を鋭く追及した。
いずれも、相手や責任、問題などに迫っていくイメージがあります。
「追求」を使う例文
- 企業が利益だけを追求してはいけない。
- より使いやすい製品を追求する。
- 彼は自分なりの幸福を追求している。
- 理想の住まいを追求した結果、この設計にたどり着いた。
- 機能性とデザイン性の両方を追求する。
こちらは、目標や理想などを求め続ける場面で使われています。
「追究」を使う例文
- 事故が起きた根本的な原因を追究する。
- 研究者は長年にわたり生命の謎を追究している。
- 問題の本質をさらに追究する必要がある。
- 歴史資料をもとに事実を追究する。
- 研究を重ね、真理を追究する。
「追究」は、表面的なところで終わらず、奥深くまで調べて明らかにしようとする場面に向いています。
間違えやすい「ついきゅう」をチェック
実際にどの漢字を使うか、よくある表現で確認してみましょう。
| 表現 | 基本的な表記 | 理由 |
|---|---|---|
| 責任をついきゅうする | 追及 | 責任の所在を問いただす |
| 利益をついきゅうする | 追求 | 利益を求める |
| 幸福をついきゅうする | 追求 | 幸福を求める |
| 理想をついきゅうする | 追求 | 理想の実現を目指す |
| 真理をついきゅうする | 追究 | 真理を深く究める |
| 原因をついきゅうする | 追究/追及 | 深く究めるなら「追究」、原因を探し求める意味なら「追求」 |
| 責任者をついきゅうする | 追及 | 相手に迫り問いただす |
| 品質をついきゅうする | 追求 | より高い品質を目指す |
ただし、この表はあくまで一般的な文脈で選びやすい表記です。
「美」「真実」などのように、文章の意味によって「追求」と「追究」の両方が考えられるものもあります。
覚え方は「及ぶ・求める・究める」
3つの「ついきゅう」を覚えるために、難しい語呂合わせを作る必要はありません。
2文字目の漢字をそのまま思い出すのが一番わかりやすい方法です。
- 追及……「及ぶ」→ 相手に追いつき、責任などに迫る
- 追求……「求める」→ 目的や理想などを追い求める
- 追究……「究める」→ 奥深くまで調べて明らかにする
たとえば「責任をついきゅうする」で迷ったら、
「責任を求めているのかな?」
ではなく、
「責任の所在を問いただし、相手に迫っている」
と考えれば「追及」が選べます。
「利益をついきゅうする」なら、利益を「求めている」ので「追求」です。
「原因をついきゅうする」なら、原因を深く調べて「究める」ので「追究」と判断できます。
「追及」「追求」「追究」に関するよくある質問
Q.「責任をついきゅうする」はどの漢字ですか?
一般には「責任を追及する」と書きます。
「追及」は、責任や問題点などに迫って問いただす意味を持つためです。
Q.「原因をついきゅうする」はどの漢字ですか?
原因を深く調べて明らかにする、特に研究や学問的に究めていく意味なら、「原因を追究する」が適しています。
一方、原因を探し求めるという意味では「原因を追求する」と表現されることもあります。
また、原因ではなく人の責任を問いただすのであれば「責任を追及する」です。
「原因なら必ず追究」と覚えるのではなく、求める=追求、究める=追究、責任などに迫る=追及と考えると判断しやすくなります。
Q.「真理をついきゅうする」は「追求」では間違いですか?
「真理を追究する」は、真理を深く研究して究める意味を明確に表せるため、代表的な組み合わせです。
ただし、「追求」は意味の範囲が広く、何かをどこまでも追い求める意味があります。そのため、文脈によって「真理を追求する」という表現まで一律に誤りとするのは適切ではありません。
「求める」に重点を置くのか、「究める」に重点を置くのかを見ると違いがわかります。
Q.「追求」と「追究」はどちらを使ってもいいのですか?
いつでも自由に置き換えられるわけではありません。
「利益を追求する」のように目的とするものを求める場合は「追求」が自然で、「原因を追究する」のように深く調べて明らかにする場合は「追究」が意味に合います。
ただし、「美」「真実」「真理」など、求めることと究めることの両方が成り立つ対象では、文脈によってどちらも使われることがあります。
Q.「追及」と「追求」はどう覚えればいいですか?
「及」と「求」の意味に注目すると覚えやすくなります。
相手や責任に迫るなら「追及」、目的とするものを求めるなら「追求」です。
さらに、深く調べて究める場合には「追究」を使う、と3つをセットで覚えると迷いにくくなります。
まとめ|「追及」「追求」「追究」は2文字目で考えるとわかりやすい
「追及」「追求」「追究」は、すべて「ついきゅう」と読みますが、意味の中心は異なります。
- 追及……相手を追い詰め、責任や問題などを問いただす。「責任を追及する」
- 追求……目的とするものをどこまでも追い求める。「利益・幸福を追求する」
- 追究……物事を深く調べ、その本質などを明らかにしようとする。「原因・真理を追究する」
迷ったときは、
迫る・問いただす → 追及
求める → 追求
究める → 追究
と考えてみてください。
ただし、「追求」と「追究」には意味が近づく場面もあります。
「この名詞には必ずこの漢字」と丸暗記するより、その文章で「求めている」のか、「究めている」のかを考えるほうが、正しい「ついきゅう」を選びやすくなります。

