本記事では、「コピー」と「複写」の違いを詳しく解説します。
どちらも“写しを作る”という点では共通していますが、
実は使われる場面や目的、そして「原本との関係性」に違いがあります。
たとえば、コンビニで印刷するのは「コピー」、
契約書で二枚複写の伝票を書くのは「複写」。
この違いを知っておくと、ビジネス文書のやり取りや公的手続きでも誤解を防ぐことができます。
この記事では、語源・使用例・誤用の注意点まで整理していきます。
語源と成り立ち
まず、「コピー」と「複写」はどちらも「写す」という行為を指しますが、
成り立ちがまったく異なります。
🔹 コピー(copy)
英語の copy から来た外来語で、もともとは「模写・写し・再現」を意味します。
現代日本語では主に「印刷機やスキャナーで複製を取ること」や
「データを複製すること(ファイルのコピーなど)」に使われます。
例:
-
コピー機で資料を印刷する
-
ファイルをコピーして別名保存する
👉 「コピー」は機械的・デジタル的な再現を意味し、
「まったく同じものをもう一つ作る」というニュアンスが強いです。
🔹 複写(ふくしゃ)
一方、「複写」は純粋な日本語の漢語で、
「複=重ねる」「写=うつす」から成り、
手作業や物理的な写し取りを指します。
例:
-
複写式伝票
-
手書きの申込書を複写で控える
👉 「複写」は同時に写しを取る・紙を重ねて記録を残すという行為を表します。
コピーが「後から写す」のに対して、複写は「書くと同時に写す」イメージです。
使われる場面の違い
| 使用場面 | コピー | 複写 |
|---|---|---|
| オフィス業務 | 印刷機・スキャンで資料を複製 | 契約書や申込書で控えを作る |
| デジタルデータ | ファイル・画像を複製 | 原則として使われない |
| 法的文書 | コピーは「写し」扱い(原本とは区別) | 正式な複写控えは法的効力を持つ場合あり |
| 日常会話 | 「コピーして渡しておくね」 | ほとんど使わない(専門的) |
たとえば——
・コンビニで印刷する → コピー
・契約書の控えをカーボン紙で作る → 複写
同じ“写す”でも、「目的」と「方法」がまったく異なります。
コピーは再現のため、複写は記録のために使われる言葉です。
誤った使い方にに注意(法律・ビジネスの文脈での違い)
「コピー」と「複写」は、日常では混同されがちですが、
ビジネスや法的文書の場面では区別が非常に重要です。
誤って使うと、書類の効力や信頼性に関わることもあります。
🔹 コピーは「写し」であり、原本とは区別される
コピーはあくまで**複製物(写し)**です。
見た目が同じでも、法的には「原本の内容を写した別の紙」であり、
正式な証拠書類としての効力は限定的です。
例:
-
契約書のコピーは「確認用」には使えるが、「提出用」にはならない場合がある
-
住民票や登記簿の「コピー」は、証明としては無効(原本または公的写しが必要)
👉 コピーは“情報を共有するため”の写し。
公的効力を持たせたい場合は「原本」や「認証済み写し(公証)」が必要です。
🔹 複写は「同時記録」であり、控えとしての信頼性がある
複写は、カーボン紙や感圧紙を使って書いた内容が同時に写されるため、
「原本と同時に作られた控え」として扱われます。
例:
-
契約書や領収書の「複写式伝票」は、控えとして正式に保存できる
-
病院のカルテや工事報告書でも、複写式が使われることが多い
👉 複写は“記録の裏づけ”として扱われ、コピーよりも信頼度が高い。
ただし、後から機械で作ったコピーとは異なる扱いになります。
🔹 よくある誤用
✖ 「この契約書のコピーを原本として保管します」
→ コピーは原本にならない。原本または複写控えを保管すべき。
✖ 「控えをコピーして署名しました」
→ コピーに署名しても効力は薄く、正式には複写式または原本署名が必要。
👉 まとめると:
-
コピー=“後から作る写し” → 情報共有用
-
複写=“同時に写す控え” → 記録・証拠用
類語・関連表現との違い(写し・転写・スキャンなど)
「コピー」「複写」と似た意味を持つ言葉には、「写し」「転写」「スキャン」などがあります。
どれも“写す”という行為を含みますが、目的と方法、そして再現性のレベルが異なります。
それぞれの特徴を整理しておきましょう。
🔹 写し(うつし)
「写し」は最も一般的な言葉で、原本の内容をそのまま再現したものを指します。
「コピー」や「複写」よりも幅が広く、手書き・機械・デジタルなど方法を限定しません。
例:
-
「契約書の写しを取っておく」
-
「戸籍謄本の写し」
👉 「写し」は“写した結果”を表す中立的な言葉。
行為ではなく成果物そのものを指す点がポイントです。
🔹 転写(てんしゃ)
「転写」は、別の面に移し取るという意味で、物理的な写しを作るときに使われます。
印刷技術や工芸、科学の分野などで多用されます。
例:
-
「印画紙に画像を転写する」
-
「布に模様を転写する」
👉 「転写」は“物質的な移動”を伴う言葉で、ビジネス書類よりも技術的な文脈で使われます。
🔹 スキャン(scan)
デジタル化の文脈で使われる言葉。
紙の情報をデータとして読み取り、電子ファイル化する行為を指します。
例:
-
「契約書をスキャンしてPDFで共有する」
-
「領収書をスキャンして経費精算システムにアップロードする」
👉 「スキャン」はデジタル時代のコピー。
原本を電子データとして保存・共有する点で、コピーや複写と一線を画します。
💡 まとめると…
| 用語 | 主な意味 | 方法 | 用途・特徴 |
|---|---|---|---|
| コピー | 再現・複製 | 機械・デジタル | 資料共有・印刷 |
| 複写 | 同時記録 | 手書き・感圧紙 | 契約書・控え |
| 写し | 結果としての写本 | あらゆる手段 | 中立的な表現 |
| 転写 | 物理的移し取り | 印刷・化学反応など | 技術的・工芸的 |
| スキャン | データ化 | デジタル読み取り | 電子保存・共有 |
👉 「コピー」は“再現”、
「複写」は“記録”、
「スキャン」は“変換”。
似ていても、それぞれの言葉には時代背景と目的の違いがあるのです。
まとめ(コピーと複写、使い分けのポイント)
「コピー」と「複写」はどちらも“写す”という意味を持ちながら、
目的・方法・信頼性の面で明確な違いがあります。
💡 一言でまとめると
-
コピー:機械的・デジタル的に“後から写す”
→ 情報共有・保存・再現に使う -
複写:手書き・感圧紙で“同時に写す”
→ 記録・証拠・控えとして使う
🧾 使い分けのポイント
-
ビジネス文書や契約書では「複写」
→ 同時に記録を残すための正式な控えとして信頼性が高い。 -
会議資料や社内共有書類では「コピー」
→ 内容の再現・配布に最適。 -
データや電子文書では「スキャン」や「コピー」
→ デジタル上での複製・共有に使う。
📎 覚えておくと便利な言い換え
-
コピー:写し・複製・印刷
-
複写:控え・二枚伝票・同時記録
👉 「コピー」は情報を広げるための言葉、
「複写」は記録を残すための言葉。
使い分けを意識するだけで、ビジネス文書の正確さや信頼性が一段と高まります。
