「それ、知ってるよ」
「うん、わかってる」
このふたつの言葉、日常会話でよく使いますが、意味の違いを意識したことはありますか?
ときには同じように使われたり、逆に「知ってるけど、わかってないよね」と言われてドキッとしたことがある人もいるかもしれません。
実は、「知ってる」と「わかってる」は、似ているようで明確な違いがあります。
この2つをうまく使い分けられるようになると、コミュニケーションのズレが減り、伝え方にも説得力が増すようになります。
この記事では、
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「知ってる」と「わかってる」の意味の違い
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会話での使い方やニュアンスの違い
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実生活で役立つ使い分けのコツ
を、わかりやすく解説していきます。
それぞれの意味と基本の違い
「知ってる」と「わかってる」は、どちらも“物事に対する理解”を表す言葉ですが、実際には指しているレベルや角度が異なります。
「知ってる」とは?
「知ってる」は、ある情報や事実を頭の中に持っている状態を指します。
たとえば、「富士山の標高は?」と聞かれて「3776メートル」と答えられるのは、「それを知っている」から。
ニュースやうわさ話、有名人の名前など、表面的な情報に触れたことがあるという意味でも使われます。
キーワード:情報・記憶・認知
「わかってる」とは?
一方の「わかってる」は、その情報や事実を自分なりに理解し、意味や理由まで踏まえて納得している状態を表します。
たとえば、上司に「もっと時間を意識して仕事して」と言われたときに「はい、わかってます」と返すのは、
「時間管理の必要性を理解し、改善の必要があることを受け止めている」というニュアンスを含んでいます。
キーワード:理解・納得・共感・応用
つまり、こんな違い
言葉 | 意味の中心 | 例文のニュアンス |
---|---|---|
知ってる | 情報を持っている | 「それは聞いたことがあるよ」 |
わかってる | 理解・納得している | 「それがどういうことかちゃんと理解してる」 |
このように、「知ってる」は**“表面的な知識”、「わかってる」は“理解の深さや気持ちの共有”**に近い言葉です。
会話での使い方の違いと例文
「知ってる」と「わかってる」は、どちらも日常会話でよく使う表現ですが、言い方ひとつで受け取られ方が大きく変わることもあります。
ここでは、会話の中でどう使い分けられるのか、具体的な例文で見ていきましょう。
「知ってる」の会話例とニュアンス
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A「この映画、すごく話題になってるんだよ」
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B「うん、知ってる。〇〇が主演だよね」
→ ここでは、映画の存在や情報を認識している・聞いたことがあるという意味で使われています。
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A「来週から新しい制度が始まるって」
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B「知ってるけど、あんまり詳しくはないんだよね」
→ 「概要は知っているけど、中身まで理解しているわけじゃない」ことが伝わります。
「わかってる」の会話例とニュアンス
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A「締め切り、もうすぐだよ。早めに仕上げてね」
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B「わかってるって。今やってるところだから」
→ 単に“知っている”だけでなく、「それが重要なこと」だと認識しているという態度が表れています。
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A「もっと気をつけなきゃダメだよ」
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B「…わかってるよ。反省してる」
→ ここでは、「自分でも反省している」「言われなくても気づいている」という、気持ちの理解や共感のニュアンスが加わっています。
使い方を間違えるとすれ違いに?
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「知ってる」と言っただけで、「わかってないでしょ」と返された
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「わかってる」と言ったけど、「本当に?」と疑われた
こうした経験がある人も多いはず。
これは、言葉の選び方ひとつで、相手に“理解度”や“誠意”が伝わってしまうからなのです。
「知識」と「理解」の差に注目しよう
「知ってる」と「わかってる」の違いは、
言い換えれば**「知識」と「理解」の違い**とも言えます。
「知識」は“持っている”だけ
知識とは、ある物事についての情報や事実を知っている状態。
辞書で調べれば出てくるような内容、ニュースで耳にする情報、人から聞いた話など、
頭の中にある“情報の断片”そのものです。
たとえば…
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「火は熱い」
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「交通ルールは守らなければいけない」
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「この薬は副作用がある」
…などは、知っていれば誰でも言えることです。
「理解」は“意味をつかんで使える状態”
一方の理解は、「なぜそうなのか」「どうすればいいのか」まで自分の中でつながっている状態です。
単に知っているだけでなく、それをもとに判断・行動できるのが理解。
たとえば…
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「火は熱いから、近づきすぎるとやけどする。だからこの距離を保とう」
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「交通ルールを守るのは、自分と他人の安全を守るためだ」
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「副作用があるから、用量を守って服用するのが大事」
このように、理解には**“意味づけ”や“応用”の力**が含まれています。
子どもと大人の「わかってる」も違う
子どもが「知ってる!」と言っても、それが「本当にわかってるか?」となると微妙なこともありますよね。
それは「言葉や事実を知っていても、その背景や意味までは理解していない」ことがあるからです。
つまり、「わかってる」と言うには、“知っている”の一歩先を行っている必要があるのです。
上司・先輩とのやり取りでは「わかってます」が効果的
職場で注意やアドバイスを受けたとき、
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「あ、それ知ってます」
→ → 一見問題なさそうに聞こえますが、「知ってるなら、なぜやっていないの?」と捉えられる可能性もあります。 -
「はい、わかってます。改善します」
→ → 注意された内容に対して理解し、次の行動につなげようとしている姿勢が伝わる表現です。
つまり、「知ってる」は事実の保有、「わかってる」は気持ちや行動の予告を含んでいるのです。
謝罪や反省のシーンでは「わかってる」の一択
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「それについては知っていました」
→ 反省の気持ちが薄く見えたり、「開き直り」のように感じられることも。 -
「その点はわかっていました。でも実行できなかったのは自分の責任です」
→ 誠実さ・理解・自覚を含んだ返答となり、相手に対して真摯な印象を与えることができます。
こうした場面では、「わかってる」が気持ちや責任を含んだ表現として最適です。
子どもや部下を指導する場面では使い分けで理解を確認
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「このルール、知ってるよね?」
→ 「はい」と答えても、それが「本当に理解している」とは限りません。 -
「どうしてそうするのか、わかってる?」
→ ここでは、「意味や理由まで理解しているかどうか」を問う、確認+考えるための質問になります。
教育やマネジメントでは、「知ってる」かどうかではなく、「わかってる=理解して行動できる状態か」を見ることが重要です。
SNSやネットの発言では「知識止まり」が目立ちやすい
SNSでは、「〜って知ってる?」という投稿やコメントが多く見られますが、
実はその多くが“聞きかじっただけ”の情報だったり、「本当に理解してる?」と疑われるケースも。
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「知ってる」と言うだけで終わると、軽い印象や信用されにくい発信になることも
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一方で「こういう背景があるから、こういう考え方になる」といった“わかってる”説明ができると、説得力や信頼性が増します
「知ってる」だけで終わらず、「なぜそうなのか」を語れることが、ネットでもリアルでも“伝わる力”の差になります。
このように、「知ってる」と「わかってる」は、相手との関係性・立場・状況によって選ぶべき言葉が変わります。
意識して使い分けるだけで、信頼・伝わり方・印象までも変える力を持った言葉なんですね。
まとめ:違いを意識すれば、伝え方が変わる
「知ってる」と「わかってる」は、どちらも“理解している”という印象を持つ言葉ですが、
実際には、その深さや意味のつかみ方に大きな違いがあります。
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「知ってる」は、事実や情報を持っている状態
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「わかってる」は、その意味や背景まで理解し、納得している状態
この違いを意識せずに使うと、「ちゃんと理解してるの?」「それってただの知識じゃない?」と
相手に不信感を与えてしまうこともあるかもしれません。
逆に、シーンに応じて言葉を選ぶことで、
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ビジネスの場では「伝わる人」になり、
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日常会話では「気持ちをくみ取れる人」になり、
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SNSなどでは「信頼される発信者」になれる可能性も広がります。
ちょっとした言葉の使い方が、自分の印象や相手との関係に大きな影響を与えるということ。
「知ってる」と「わかってる」を、これからは上手に使い分けていきましょう!