「起きる」と「起こる」はどちらもよく使われる動詞ですが、使い方には微妙な違いがあります。例えば、「火事が起きる」とも言えるし、「火事が起こる」とも言えますが、「私は6時に起きる」と言いながら、「私は6時に起こる」とは言わないでしょう。
これらの動詞の使い分けには一体どんなルールがあるのでしょうか?
本記事では、「起きる」と「起こる」の違いとその使い分けを例文を交えて解説していきます。
「起きる」と「起こる」の使い分けとその背景
まずは、「起きる」と「起こる」の基本的な違いから説明します。
「火事が起きる」と「火事が起こる」は、現代日本語ではどちらの表現も正しく使用されています。これらの表現に誤りはありません。
しかし、元々「起きる」は人間や動物が寝ていた状態から起立する行為に限定されており、「私は6時に起きる」という形で使用されていました。
一方で、「起こる」は人や動物の自発的な行動とは関連せず、何らかの事件や事故などの発生を指す際に使われることが多かったです。つまり、「火事が起こる」といった文脈で使われていたのです。
今日では、「起こる」を人間や動物の行為に使うことはありませんが、出来事が発生する際には「起きる」と「起こる」が共に使われることがあります。
このように、「起きる」と「起こる」はそれぞれ異なる文脈で使い分けられることが理解されています。
これからさらに詳しく各用語の用法を解説していきます。
「起きる」と「起こる」の使い分けの要点
「起きる」という動詞は、元々横になっている状態から立ち上がる行動を指します。この場合、主語は「自分自身」「他人」「動物」に限定されており、もともと「起きる」はこれらが寝ている状態から起き上がることを意味していました。
この「起き上がる」という基本的な意味から拡がって、事象が「発生する」という意味で使われるようになりましたが、事象が発生する際には初め「起こる」という表現が使われるようになりました。これは、事件や事故などの出来事に焦点を当てた用法です。
歴史的には、「起きる」は人間や動物の行動に関連し、「起こる」は出来事が発生する状況に使われるという区分が存在しました。しかし、時間が経つにつれ、「発生した事象」に対しても「起こる」に加えて「起きる」が使われるようになりました。そのため、現代では「火事が起きる」と「火事が起こる」が共に正しい表現とされています。
病気などの非行動的な事象に関しても、「腹痛が起こる」「腹痛が起きる」どちらの表現も正しいです。
ただし、人間や動物が自発的に行動する文脈では、「起きる」のみが使用され、「私は6時に起きる」と言いますが、「私は6時に起こる」とは言いません。同様に、「犬が早く起こる」という表現も不適切です。
このように、これら二つの動詞の使い分けには明確なルールが存在し、現在もその区分が保持されています。
「起きる」が使えない「出来事の発生」のケース
「起きる」と「起こる」はどちらも出来事の発生を示す動詞ですが、「起こる」のみが複合動詞として使用できる点で異なります。
例えば、「巻き起こる」という表現は「巻く」と「起こる」の組み合わせで成立しますが、「巻く」と「起きる」を組み合わせた「巻き起きる」という言い方はしません。このように「大ブームが巻き起こる」という表現は正しく、一方で「大ブームが巻き起きる」とは言えません。
また、「湧く(沸く)」と「起こる」を組み合わせた「湧き起こる」という形もあります。これは「拍手が湧き起こる」といった使い方で用いられますが、「拍手が湧き起きる」とは表現しません。
このように、「起きる」ではなく「起こる」を使用する必要があるケースが存在するため、出来事の発生を表す際には使い分けが重要です。
「起きる」と「起こる」の違いの整理
「起きる」と「起こる」の違いをもう一度整理してみましょう。
「火事が起きる」と「火事が起こる」は現代ではどちらも正しい表現とされていますが、過去にはこれらの用語の使い方に明確な区分がありました。「起きる」は元々人間や動物の行為に限定され、一方で「起こる」は何らかの事件や出来事が発生する際に用いられていました。そのため、昔は「火事が起こる」と表現するのが一般的で、「火事が起きる」は不適切とされていました。
現在では、このような区分があいまいになり、「火事が起きる」「火事が起こる」どちらも一般的に受け入れられています。しかし、「ブームが巻き起こる」「拍手が湧き起こる」といった複合動詞を使用する場合には「起きる」は適用されず、「起こる」のみが使われることに注意が必要です。
このように、両語の現代的な使い方と伝統的な区分を理解することが、これらの言葉を適切に使い分ける鍵となります。
「起きる」と「起こる」の辞書における意味
ここでは、「起きる」と「起こる」の意味について辞書を基に検討します。
「起きる」の辞書での意味
【起きる】
- 横になっていたものが立ち上がる。
- 目を覚ます。目を覚まして、寝床から出る。
- 眠らないでいる。例:「父が帰って来るまで起きている」
- 発生する。起こる。例:「事件が起きる」
引用元: 旺文社国語辞典
ここでの意味①と④は、以前説明した内容と一致しています。さらに、「目を覚ます」や「眠らずにいる」という意味も加わっています。
「起こる」の辞書での意味
【起こる】
・新たに生じる。発生する。始まる。例:「事件が起こる」「デフレから起こる問題」「持病が起こる」
引用元: 旺文社国語辞典
この定義は、出来事や現象が新たに発生することを指しており、先の説明とも一致しています。
以上の辞書定義から、「起きる」は自身の行動や状態の変化に関連する場合に加え、出来事の発生にも使われることがわかります。一方で、「起こる」は出来事や現象が始まる状況を指す用法に特化しています。これらの定義を踏まえ、適切な文脈での使用が求められます。
「起きる」と「起こる」の具体的な使い方
ここでは、「起きる」と「起こる」の使い方を具体的な例文を通じて紹介します。
「起きる」の使い方
- 自然現象や人間の行動を示す場合に使用します。
- 突然大きな地震が起きる。
- 南太平洋で津波が起きる。
- 睡眠不足ではあるが、頑張って起きる。
- 子供たちが一斉に起きる。
「起きる」は物理的な動きや自然現象の発生、個人の行動に用いられることが多いです。
「起こる」の使い方
- 主に事象や行動が原因で何か新たな事態や反応が生じる場合に使用します。
- 突然大きな地震が起こる。
- 南太平洋で津波が起こる。
- 地球温暖化について世界中で論争が巻き起こる。
- 激しい試合に自然に歓声が湧き起こる。
「起こる」は一般的に、何かが引き起こされる、つまり何らかの原因によって結果が生じる状況に適しています。特に「巻き起こる」や「湧き起こる」といった複合動詞の形でよく用いられます。
これらの例文から、「起きる」と「起こる」の適切な使い分けを理解し、日常会話や文章の中で正確に使えるようにしましょう。
まとめ
本記事では、「起きる」と「起こる」の違いとそれぞれの使い分けについて詳しく解説しました。
現代の日本語では、「火事が起きる」と「火事が起こる」はどちらも正しく使われる表現です。しかし、「私は6時に起きる」と言うのに対して、「私は6時に起こる」とは言わず、この使い方は間違いとされています。
また、複合動詞では、「ブームが巻き起こる」「拍手が湧き起こる」という表現が正しく、「ブームが巻き起きる」「拍手が湧き起きる」とは言わない点も覚えておく必要があります。
歴史的には、「起きる」は主に人や動物が寝た状態から立ち上がる動作に使われ、「起こる」は事件や事象が新たに発生する状況に用いられてきました。この使い分けが現代でも一部反映されていることを理解すると、より正確な日本語表現が可能になります。
この記事を通じて、これら二つの動詞の適切な使用方法を身につけ、より明確で正確なコミュニケーションを目指しましょう。