「改ざん」と「捏造」はニュースで頻繁に耳にする用語ですが、これらの言葉が指す具体的な意味は何でしょうか？
確かにどちらも何かを偽る行為を指すように思えますが、実際には重要な違いがあります。例えば、あるデータに手を加える行為を「改ざん」と呼び、存在しないデータを創り出すことを「捏造」と言います。
この記事では、「改ざん」と「捏造」の概念をしっかりと区分し、それぞれの用語がどのような状況で使われるのかを具体例を交えて解説します。
「改ざん」と「捏造」の定義とその違い
まず、「改ざん」と「捏造」の意味の違いから解説します。
「改ざん」とは、既存の文書やデータを自分に都合の良いように変更することを指します。これは、文字や数字を書き換えることによって行われます。
一方で、「捏造」は、存在しない事実をあたかも本当にあるかのように創り出す行為を言います。これは、完全に架空のデータや情報を作り上げることに他なりません。
このように、両者は似て非なるものとして理解することが重要です。次に、それぞれの用語がどのような状況で使われるかを、詳しく見ていきましょう。
「改ざん」の意味と具体的な使用例
「改ざん」とは、文書やデータなどの既存の情報を自分に都合のよいように書き換える行為を指します。これに対して、「捏造」は存在しない事実を作り出すことですが、「改ざん」は実際に存在するものを変更することに重点があります。
例として、「アルミニウム製品の検査データを改ざんし、実際には基準を満たしていないにも関わらず、満たしているかのように見せかけて製品を販売した」という事例が挙げられます。これは、不適合な製品を適合しているように偽装することにより、購入者を欺く行為です。
「改ざん」という言葉は、「改める」を意味する「改」と、逃げ隠れるために何かを書き換えることを意味する難読字「竄（ざん）」で構成されています。「竄」自体には、「逃げる」「隠れる」「書き換える」といった意味があります。したがって、「改ざん」は、不都合な事実を隠蔽するために情報を書き換えることを強調しています。
「捏造」の意味と使用例
「捏造」とは、実際に存在しない事柄を事実であるかのように創り出す行為です。これは、「改ざん」と異なり、元々存在しない情報やデータを新たに作り出すことを意味します。
具体的な例を挙げると、「アルミニウム製品の検査データを捏造し、厳しい品質検査を受けたかのように見せかけて製品を販売する」という場合がこれに該当します。ここでの重要な点は、前述の改ざんの例では実際に検査が行われた上でデータが改ざんされていたのに対し、捏造のケースでは検査自体が行われていないことです。
販売先が信じていた「検査済みの高品質製品」が、実際には未検査であることが後に発覚した場合、それは明らかな欺瞞行為であり「捏造」の典型例となります。
「捏造」の文字「捏」には、「こねる」「形を作る」などの意味があり、「造」は「作る」という意味を持ちます。これらを組み合わせると、「無から有を作り出す」という捏造の本質が表れます。
「改ざん」と「捏造」の違いの要点整理
「改ざん」と「捏造」の違いを改めて明確に整理しましょう。
「改ざん」は既存の文書やデータを自己に有利になるように書き換える行為です。これは、実際に存在する情報の一部を変更することにより行われます。
対照的に、「捏造」は完全に存在しない情報やデータを新たに創り出し、それを事実であるかのように偽る行為です。ここには何もない状態から、全く新しい偽の事実を作り出すプロセスが含まれます。
簡単に言えば、「改ざん」は「書き換える」こと、「捏造」は「新たに作り出す」ことで区別されます。この違いを理解することは、ニュース記事や報告書を評価する際に非常に重要です。
「改ざん」と「捏造」の辞書定義
ここでは、「改ざん」と「捏造」の辞書による正確な定義を確認していきます。
「改ざん」の辞書定義
【改竄（かいざん）】
- 辞書定義：自分に都合の良いように、文書の字句を書き換えること。
- 引用元：旺文社国語辞典
これは先に説明した内容と一致しており、実際の文書やデータを改変する行為を指します。
「捏造」の辞書定義
【捏造】
- 辞書定義：実際には存在しないことを、存在するかのように偽って創造すること。また、でっち上げること。「データを捏造する」
- 引用元：旺文社国語辞典
この定義も、初めに述べた「捏造」の説明と合致しています。こちらは、非実在の情報を事実のように創出する行為を指すことが明確です。
これらの定義をもとに、「改ざん」と「捏造」の違いを理解することができます。
「改ざん」と「捏造」の具体的な使用例
「改ざん」と「捏造」の用語は日常の様々な状況で使われます。それぞれの用語を正確に理解し、適切に使用するための具体的な例文を紹介します。
「改ざん」の使い方
- ある職員が有給休暇の取得記録を書き換え、規定より多く休んだため解雇されました。
- 子会社がタイヤ素材の品質データを書き換えたことが明るみに出た。
- 中学3年生の男子生徒が学校の教員用サーバーに不正アクセスし、自らの成績を書き換えました。
- 近年、企業や公的機関のウェブサイトが外部から改ざんされる事件が増加しています。
「捏造」の使い方
- 教員が実際には行っていない家庭訪問をしたと報告書に捏造して記載していました。
- ある大学で発表された研究論文のデータが捏造されていたことが内部調査で判明しました。
- アメリカの月面着陸が捏造だと主張する説には、科学的な検証と反論が続けられています。
- 被告人が自供を強要され、提出された証拠が捏造であったことが後に証明されました。
これらの例を通じて、「改ざん」と「捏造」の違いと正確な使い方を理解することができます。
まとめ
ここまで「改ざん」と「捏造」の違いとそれぞれの具体的な使用例を見てきました。
「改ざん」は、実際に存在する文書やデータを自分の利益のために書き換える行為です。 一方、「捏造」は、存在しない事実やデータを創造し、それが実際にあるかのように偽る行為です。
これらの行為は、似ているようで根本的に異なるものですが、どちらも倫理的に許されない行為であるという点では共通しています。情報の正確性と信頼性を維持するためには、これらの行為を避けることが絶対に必要です。
