「給与」と「給付」は似たような言葉で、しばしば混同されがちです。これらの言葉は、漢字の「給」を共通に持ちながら、「与える」と「付ける」の違いがあります。
「給与」は「給与明細」から連想されるように、毎月支払われる給料としての意味合いが強いですが、この言葉には他の意味も含まれています。これが「給付」と混同される原因かもしれません。
この記事では、「給与」と「給付」の意味の違いと、それぞれの用語の適切な使い方を具体的な例を挙げて詳しく解説します。
「給与」と「給付」の基本的な意味と区別
まずは、「給与」と「給付」の基本的な違いから説明します。
「給与」は物や金銭を提供する行為を指し、特に労働に対する対価として官公庁や企業から支払われる金銭を意味します。これには給料や賞与などが含まれます。
一方で、「給付」は公的機関や保険会社が特定の規定や条件に基づいて金品を支払うことを指します。これには社会保険の給付や福祉給付などが該当します。
これらの違いを踏まえて、さらに各用語の詳細について解説していきましょう。
「給与」の二重の意味を解説
「給与」という語には、二つの異なる意味が存在します。
最初に、古くからの意味である「品物や金銭を適切に与える」ことから説明しましょう。この用法は現代ではあまり一般的ではなく、「適当と思われるものを与える」というニュアンスを持ちます。例えば、「彼には酒をあてがっておけば静かになる」や「子供が騒いでいる時に玩具をあてがう」といった表現がこれに該当します。この表現はやや上から目線の感じを与えることがあります。
また、「与える」という動詞は、恩恵を与える際に用いられることが多く、目下の者に何かを授ける際に使われることがあります。これが、現代ではあまり使われなくなった一因かもしれません。
具体的な例としては、「作業用の個室を給与される」「工具を給与する」「制服が給与された」といった表現があります。
次に、「給与」の現代的な意味である、労働の対価として官公庁や企業から支払われる金銭についてです。これは一般的に毎月支払われる給料や賞与、時間外手当などを含む全ての金銭的報酬を指します。この意味での「給与」は、「給与明細書」や「給与所得控除」といった文脈で使われます。
このように、「給与」と一言で言っても、その背景には複数の意味が存在するため、文脈に応じて正確に理解することが重要です。
「給付」の定義と適用範囲
「給付」とは、公的機関や保険会社などが特定の規定に基づいて金品を提供する行為を指します。
給付の主な提供者は国や公共団体、保険会社など限られた機関であり、一般的に「給付金」として知られています。例えば、東日本大震災の被災者に対して支給された「住まいの復興給付金」や、保険会社からの「入院給付金」などがこれに該当します。
給付の過程では公平性が求められるため、受給資格は厳格な審査を経て決定されます。これは、単に申し出た全ての人に支給されるわけではなく、特定の規定に従って対象者が選ばれるという意味です。
また、「給付」において提供されるものは「金銭」や「品物」を含みます。金銭的な支援が「給付金」として提供される一方で、品物の場合は「商品券」などが配布されることがあります。このように、「給付」は特定の条件を満たす者に対して限定的に提供されるサポートと言えます。
「給与」と「給付」の違いを整理
「給与」と「給付」は、似た言葉ですがその本質は大きく異なります。
「給与」は二つの主な意味を持ちます。一つ目は、品物や金銭を適当と思われるものとして与えることですが、現代ではあまり一般的ではありません。もう一つの意味は、より一般的であり、官公庁や会社などから労働の見返りとして支払われるすべての金銭を指します。これには給料、ボーナス、手当などが含まれます。
一方、「給付」は公的機関や保険会社が特定の規定に基づいて金品を提供することを指します。これは主に公的な支援や補助金の形で提供され、受給者は特定の条件に基づいて選ばれます。
このように、「給与」は労働の対価としての報酬を意味し、「給付」は条件付きの公的な支援や補助を意味します。これらの違いを理解することは、適切な文脈での語の使用に不可欠です。
辞書における「給与」と「給付」の定義
ここでは、辞書に記載されている「給与」と「給付」の意味を詳しく確認してみましょう。
「給与」の辞書定義
- 品物や金銭をあてがい与える行為、またはその品物や金銭。例えば「現物給与」「制服を給与する」などと使用されます。
- 官公庁や会社などで働く人々に対して支払われる賃金や手当などを総称した言葉。これには給料やサラリー、俸給などが含まれ、「給与所得」として参照されることもあります。
引用元: 旺文社国語辞典
「給付」の辞書定義
- 国や公共団体などが金品を支給する行為。「補助金の給付」という形で使われることが一般的です。
引用元: 旺文社国語辞典
これらの定義から、「給与」と「給付」がどのように異なるかが明確になります。「給与」は労働の対価としての支払いや、あてがい与えるという意味合いで使われることが多いのに対し、「給付」は特定の条件を満たす個人や団体に対して公的機関から提供される金品を指します。このように、辞書での定義を基に、日常生活や専門的な文脈での用語使用が整理されます。
「給与」と「給付」の具体的な使用例
このセクションでは、「給与」と「給付」の実際の使用例を挙げて、これらの用語がどのように使われるかを解説します。
「給与」の使用例
- 現物給与として会社が社員に衣服を支給する場合、その支給される衣服は所得税の対象になることがあります。
- 業界全体で見られる給与への不満が表面化している。
- 従業員に提供される食事代は、福利厚生費または給与として処理されることが一般的です。
- 地方の低い給与水準が全国的な水準に影響を与える場合があります。
「給付」の使用例
- 家計向けの現金給付に関して、国は基準を全国で一律化する方針を示しています。
- 複数の生命保険会社が入院給付金の支払い対象とする方向で検討中であることがわかりました。
- 「かんたん請求」を利用することで、給付金の迅速かつ簡単な支払いに対する顧客のニーズに応えています。
- 現金給付の制度設計とその背景について詳細な説明が行われました。
これらの例文を通じて、「給与」と「給付」の適切な使い方を理解することができます。それぞれが異なる文脈で使用されるため、その違いを把握しておくことは重要です。
まとめ
この記事では、「給与」と「給付」という二つの用語の意味の違いと適切な使い方を詳しく解説しました。
「給与」は、主に二つの意味で使用されます。一つ目は、品物や金銭を適当と見なされるものとして与える行為です。もう一つは、官公庁や企業などが労働の対価として支払う全ての金銭を指します。この用語は、給料やボーナス、その他の手当てを含む広い範囲の報酬をカバーします。
一方で、「給付」は、公的機関や保険会社が特定の規定に基づいて金品を提供することを指します。この用語は、主に社会保険や公的支援の文脈で使用され、受給者が明確な条件を満たす必要がある状況で使われます。
簡単に言うと、「給与」は労働の見返りとして「与えられる」もの、「給付」は条件を満たした場合に「付けられる」ものです。この違いを理解することで、これらの用語を日常生活や専門的な議論の中で正確に使い分けることができます。
