本記事では、「しでかす」と「やらかす」の違いを詳しく解説します。
どちらも「失敗をする」「思わぬことをしてしまう」という意味を持ちますが、実はニュアンスが大きく異なります。
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「しでかす」 → 重大な失敗や深刻な過ち
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「やらかす」 → 軽めの失敗や笑い話にできる出来事
同じ「やってしまった」という意味でも、使う場面を誤ると大げさになったり、逆に軽すぎたりして不自然に聞こえることもあります。ここでは例文やシーン別の使い方を交えながら、2つの言葉の違いを徹底的に掘り下げていきます。
「しでかす」の意味と使い方
「しでかす」とは、予想外のことをしてしまう中でも、特に 大きな失敗や重大な出来事を起こす ことを指します。
語感としても硬めで、少しネガティブな響きを持っています。日常の小さな失敗よりも、人生や社会に影響を与えるような出来事に使われやすいのが特徴です。
例文
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彼は会社の金を横領するということを しでかした。
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あの有名人はスキャンダルを しでかして、世間を騒がせた。
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大事な試合で致命的なミスを しでかして、チームを敗退させてしまった。
👉 「しでかす」は 取り返しがつかない・責任が重い というニュアンスを含むため、ニュース記事や真面目な文脈でよく使われます。
「やらかす」の意味と使い方
「やらかす」は「やる」のくだけた言い回しで、軽めの失敗や笑い話になるような出来事 を表します。
カジュアルでユーモラスな響きがあり、SNSや友達同士の会話で頻繁に使われます。深刻さはなく、「やっちゃった!」という感覚に近い言葉です。
例文
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昨日寝坊して会社に遅刻、また やらかしちゃった。
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新しいシャツにコーヒーをこぼすなんて、ほんと やらかしたなあ。
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友達の誕生日を忘れるという大失態を やらかした。
👉 「やらかす」は 自分や相手の失敗を軽く笑い飛ばす ときに便利な表現です。
違いを整理すると…
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しでかす
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規模が大きい
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深刻な過ちや不祥事
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責任が重い・取り返しがつかない
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やらかす
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規模が小さい
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日常的な失敗やドジ
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笑い話や共感を呼ぶ
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👉 一言でいえば、「しでかす=大事件」「やらかす=うっかり」 です。
誤った使い方に注意
「しでかす」と「やらかす」は似ている分、誤用されやすい言葉でもあります。
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「やらかす」を深刻な事件に使うと軽すぎる
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× 「首相が汚職をやらかした」
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→ 深刻さが伝わらず、冗談のように響いてしまう
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「しでかす」を日常のドジに使うと大げさ
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× 「コンビニでお釣りを落とすということをしでかした」
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→ 些細な出来事なのに、わざと大げさに言っている印象になる
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表現の重さが合っているかどうかを確認してから使うと安心です。
由来の違い
「しでかす」の由来
「しでかす」はもともと「し出かす」と書かれた言葉です。
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「し出す」= 物事をし始める、行動に移す
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「かす」= 動作を強める接尾語
この二つが組み合わさって「し出かす」となり、やがて発音が変化して「しでかす」となりました。
当初は単に「何かをし始める」「やり遂げる」という意味でも使われましたが、江戸時代以降に「思いがけず大きなことをやってしまう」というニュアンスが強まります。特に「失敗」「悪事」「大ごと」といったネガティブな出来事に結びつきやすくなり、現在のように「とんでもないことをしてしまう」という意味が定着しました。
👉 つまり「しでかす」には歴史的に「行動を起こした結果、収拾がつかなくなる」というイメージが含まれているのです。
「やらかす」の由来
一方で「やらかす」は、もっと口語的でくだけた成り立ちを持ちます。
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「やる」= 物事を行う
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「〜かす」= 動作を強める/やってしまう
「やってしまう」「やらかしてしまう」といった形で強調されることで、軽い失敗や失態を表す言葉として広まりました。
江戸後期から明治にかけては「やる」という言葉自体が日常会話で盛んに使われ、その中で「やらかす」という砕けた表現が生まれたと考えられています。特に若者言葉や口語で使いやすく、「うっかり」「ドジった」という軽妙なニュアンスとともに浸透していきました。
👉 こちらは「しでかす」と違い、深刻さよりも「笑い」や「共感」を含む言葉に育っていったのです。
二つの言葉の共通点と分岐
両者の出発点には共通点があります。
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「行動に出る」=「し出す」「やる」
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そこに「かす」がつくことで「やってしまう」という意味に発展
ただし、歴史の中で「しでかす」は重く、「やらかす」は軽く用いられるように分かれていきました。
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しでかす:武士の不祥事や商人の大失態など、社会的に問題になる行動を表す言葉として定着。
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やらかす:庶民の日常会話や笑い話で、「ついやってしまった」という小さな失敗を表す表現に変化。
👉 このように由来をたどると、「しでかす」と「やらかす」の現在のニュアンスの違いは偶然ではなく、歴史的な背景や使われてきた場面の差から生まれたことがわかります。
現代文化における「しでかす」と「やらかす」
SNSでの使われ方
SNS上では「やらかす」が圧倒的に多く使われています。Twitter(X)やInstagramの投稿で、
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「スマホ忘れてきた…やらかした」
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「推しのライブチケット取れなかった…完全にやらかした」
といった具合に、日常の小さなミスやちょっとした不運を表す定番ワードになっています。絵文字(😂🙈)やスタンプと相性が良く、失敗を笑いに変えるニュアンスが強いのが特徴です。
一方、「しでかす」はSNSでも見かけますが、やや深刻さや皮肉を込めて使われることが多いです。
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「あの政治家、また大きなことをしでかしたな」
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「会社の上層部がやらかすレベルじゃない大失策をしでかしてる」
👉 SNSでは「やらかす=日常」「しでかす=事件」という棲み分けが自然にできています。
メディアでの使われ方
新聞やニュースサイトなどのメディアでは、「しでかす」が多用されます。特に不祥事や事件に関連して、見出しに使われることが多いです。
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「有名企業の社長が重大な不正をしでかす」
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「人気俳優、酒気帯び運転をしでかす」
ニュース記事では「やらかす」を用いると軽すぎて不謹慎に聞こえてしまうため、フォーマルさと重みのある「しでかす」が好まれるのです。
逆に、バラエティ番組やネットニュースでは「やらかす」がよく登場します。
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「お笑い芸人、舞台で大ボケをやらかす!」
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「アイドルがトーク番組で天然発言をやらかして大爆笑」
こちらは深刻ではなく、あくまでエンタメ性を引き立てる表現として使われています。
若者言葉としての広がり
若者の会話では「やらかす」が日常的に使われています。特に「やらかした〜!」は、友達同士の間での定番フレーズ。勉強の失敗や恋愛のドジ、ちょっとした恥ずかしい出来事まで幅広くカバーできる便利な言葉です。
一方で「しでかす」は、日常会話で多用されることは少なく、むしろ「重さ」を出したいときにあえて選ばれる表現です。たとえば、
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「あいつ、とうとう本当にしでかしたな」
というときは、単なる失敗以上の“大ごと”感を強調する効果があります。
まとめると
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SNS → 「やらかす」が日常系で大活躍。軽快で笑える失敗にぴったり。
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メディア → 「しでかす」がニュース性のある事件・不祥事に使われる。
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若者言葉 → 「やらかす」が会話の必須ワード。「しでかす」はネタっぽく使うことでインパクトを与える。
👉 つまり現代文化では、「やらかす=カジュアル」「しでかす=シリアス」という使い分けが、自然に浸透しているのです。
関連語のバリエーション
「しでかす」と「やらかす」は、他の“失敗を表す言葉”とも比較すると違いがより分かりやすくなります。ここではニュアンスの近い表現を整理してみましょう。
「ドジる」
若者言葉として定着している表現で、「小さなミス」「注意不足からの失敗」を意味します。
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例:「階段でつまずいて転んじゃった、完全にドジった!」
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例:「またドジって宿題を家に忘れてきた」
👉 ドジるは日常の軽い失敗に限られ、笑いを伴うことが多いです。そのため「やらかす」と近い立ち位置にありますが、さらに規模が小さく“かわいいミス”というニュアンスも含みます。
「ヘマする」
「ヘマ」は江戸時代から使われてきた庶民的な言葉で、「失策・間違い」を意味します。
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例:「あんな簡単な問題でヘマをするなんて」
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例:「重要な場面でヘマをしてしまった」
👉 「ドジる」よりも年齢層が広く、社会人の会話にも登場します。やはり深刻さは弱く、「やらかす」と同じくカジュアルな表現ですが、やや古風で落ち着いた響きがあります。
「失態」
「失態」はフォーマルな表現で、社会的に見て恥ずかしい行動や失敗を意味します。
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例:「酔って大騒ぎするという失態をさらした」
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例:「社長の失態が企業の信用を失わせた」
👉 これは「しでかす」に非常に近く、責任や社会的影響が大きい場面で使われます。ニュース記事や公的な文章にもしばしば登場します。
その他の関連語
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ポカ:ちょっとした思い違いや注意不足。「ポカミス」とも言う。軽めなので「やらかす」寄り。
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過ち(あやまち):古風で文学的な表現。深刻な場合にも使えるため「しでかす」に近い。
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ミス:英語由来の中立的な言葉。大小どちらの失敗にも使える。
位置づけをまとめると
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しでかす ≒ 失態、過ち
→ 深刻さ・社会的影響を伴う失敗。重みがある。 -
やらかす ≒ ドジる、ヘマする、ポカ
→ 日常的で軽い失敗。親しみやすく、笑いにも変えやすい。
👉 こうして関連語と比べると、「しでかす」と「やらかす」のニュアンスの幅がはっきり見えてきます。どちらを選ぶかで、相手に伝わる“失敗の重さ”が大きく変わるのです。
まとめ:失敗の重さで変わる「しでかす」と「やらかす」
「しでかす」と「やらかす」は、どちらも「失敗」や「思わぬことをしてしまう」という意味を持ちながら、失敗の大きさや場面によってニュアンスが大きく異なります。
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しでかす
→ 「し出かす」が語源。重大な過ちや深刻な事件を表す。ニュース記事や社会的な出来事にふさわしい言葉。
例:「彼は会社のお金を横領するという大ごとをしでかした」 -
やらかす
→ 「やる」から生まれた砕けた言葉。小さな失敗やドジを表す。日常会話やSNSで軽快に使える言葉。
例:「スマホを家に忘れるなんて、またやらかした」
関連語で見ても、「しでかす」は「失態」「過ち」と同じ重い領域に属し、「やらかす」は「ドジる」「ヘマする」「ポカ」と同じ軽い領域に近いことが分かります。
現代文化でも、この違いは自然に反映されています。
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SNSや友達との会話では「やらかす」が主流
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ニュースや公的な文章では「しでかす」が多用される
👉 つまり、二つの言葉の差は単なる言い換えではなく、“失敗の重み”を表現するための選択肢なのです。
次にあなたが失敗を語るとき、「しでかす」と「やらかす」どちらを選ぶかで、その出来事の印象が大きく変わるでしょう。