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「売り上げ」「売上げ」「売上」の表記にはルールがあった!:適切な使い分けは?

用途

日本語の入力システムで「うりあげ」と入力すると、「売り上げ」「売上げ」「売上」という3つの異なる表記が候補に現れます。これらはすべて正しい表記ですが、使用する文脈によって選び方に違いがあります。

それでは、これらの表現がどのような状況で使われるのか、またどの表記を選ぶべきかについて検討します。全てが同じように使えるわけではないのです。

この記事では、それぞれの表記の特徴と、場面に応じた適切な使い分けを明らかにします。実際には、それぞれの表記には使い方の基準が存在しているのです。

最後に、これらの表記の違いとそれぞれの使い方について、具体的に説明していきます。

 

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「売り上げ」「売上げ」「売上」の表記法:適切な使用例を解説!

まずは、「売り上げ」「売上げ」「売上」の三つの表現の使い分けについて概説します。

通常、「売り上げ」という表記が最も一般的で、これが標準的な送り仮名の使い方とされています。一方、「売上げ」も文脈によっては許容される形です。

動詞としての「うりあげる」「うりあげよう」においても、「売り上げる」「売り上げよう」と表記するのが適切です。

「売上」の使用は、主に「売上高」「売上金」のように他の語と組み合わせて使われる場合であり、ここでは送り仮名は省略されます。

公用文では「売上げ」を標準として使用し、動詞形でも「売り上げる」「売り上げよう」とするのが正式です。ただし、「売上高」や「売上金」などの合成語では、「売上」が正しい表記となります。

このような表記の違いは、文脈に応じて選ばれます。次に、これらの表記の根拠と詳細な説明を行っていきます。

 

一般的な状況での「うりあげ」の適切な表記(公用文以外)

公用文以外の文脈で、「うりあげ」の正しい表記について解説します。

基本的な「うりあげ」の送り仮名について

一般的に「うりあげ」は「売り上げ」と表記されることが多いです。この表記は、内閣法制局による公式な指針に基づいています。

具体的には、1973年の内閣告示第二号「送り仮名の付け方」にて定められており、「複合の語 通則6(本則)」で詳しく規定されています。この通則には、複合の語の送り仮名はその漢字が独立した語としてどのように使われるかに基づいて決定されると明記されています。

その告示の「複合の語 通則6(本則)」の内容が以下のとおりです。

送り仮名の付け方 複合の語 通則6
本則
複合の語(通則7を適用する語を除く。)の送り仮名は,その複合の語を書き表す漢字の,それぞれの音訓を用いた単独の語の送り仮名の付け方による。

〔例〕 (1) 活用のある語
書き抜く 流れ込む 申し込む 打ち合わせる 向かい合わせる 長引く 若返る 裏切る 旅立つ 聞き苦しい 薄暗い 草深い 心細い 待ち遠しい 軽々しい 若々しい 女々しい 気軽だ  望み薄だ

(2) 活用のない語
石橋 竹馬 山津波 後ろ姿 斜め左 花便り 独り言 卸商 水煙 目印 田植え 封切り 物知り 落書き 雨上がり 墓参り 日当たり 夜明かし 先駆け 巣立ち 手渡し 入り江 飛び火 教え子 合わせ鏡 生き物 落ち葉 預かり金 寒空 深情け 愚か者 行き帰り 伸び縮み 乗り降り 抜け駆け 作り笑い 暮らし向き 売り上げ 取り扱い 乗り換え 引き換え 歩み寄り 申し込み 移り変わり 長生き 早起き 苦し紛れ 大写し 粘り強さ 有り難み 待ち遠しさ 乳飲み子 無理強い 立ち居振る舞い 呼び出し電話 次々 常々 近々 深々 休み休み 行く行く

引用元:内閣告示第二号:送り仮名の付け方 複合の語 通則6【本則】

 

例えば、「売る」+「上げる」の場合、「売り上げ」という形で各漢字に応じた送り仮名を付けることが推奨されています。

「うりあげ」の許容範囲と適切な使用法

公用文以外での「うりあげ」表記の許容範囲について詳しく説明します。

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② 許容される「うりあげ」の表記のバリエーション

一般的には「売り上げ」という表記が推奨されていますが、特定の条件下では「売上げ」や「売上」も正しい表記として認められています。

これは「送り仮名の付け方 通則6(許容)」に基づくもので、読み間違えのおそれがない場合、送り仮名を省略することが許されています。例えば、「書き抜く(書抜く)」や「申し込む(申込む)」などがこの規則に従っています。

 

送り仮名の付け方 複合の語 通則6
許容
読み間違えるおそれのない場合は,次の( )の中に示すように,送り仮名を省くことができる。

〔例〕
書き抜く(書抜く) 申し込む(申込む) 打ち合わせる(打ち合せる・打合せる) 向かい合わせる(向い合せる) 聞き苦しい(聞苦しい) 待ち遠しい(待遠しい) 田植え(田植) 封切り(封切) 落書き(落書) 雨上がり(雨上り) 日当たり(日当り) 夜明かし(夜明し) 入り江(入江) 飛び火(飛火) 合わせ鏡(合せ鏡) 預かり金(預り金) 抜け駆け(抜駆け) 暮らし向き(暮し向き) 売り上げ(売上げ・売上) 取り扱い(取扱い・取扱) 乗り換え(乗換え・乗換) 引き換え(引換え・引換) 申し込み(申込み・申込) 移り変わり(移り変り) 有り難み(有難み) 待ち遠しさ(待遠しさ) 立ち居振る舞い(立ち居振舞い・立ち居振舞・立居振舞) 呼び出し電話(呼出し電話・呼出電話)

引用元:内閣告示第二号:送り仮名の付け方 複合の語 通則6【許容】

 

特に「売り上げ」に関しては、「売上げ」や「売上」と表記しても読み間違えのおそれがないため、これらの形式も広く受け入れられています。引用元は内閣告示第二号の「送り仮名の付け方 複合の語 通則6【許容】」に記載されています。

動詞形「売り上げる」「売り上げよう」についても、「売上げる」「売上げよう」とすることが可能です。これは、動詞の活用において送り仮名を省略しても意味の理解に支障がないためです。

しかし、「売上る」「売上よう」という形は一般的ではなく、特に「売上」を動詞として用いる場合は注意が必要です。この点については、次の段落で詳しく説明します。

他の語と組み合わせる場合の「うりあげ」の表記

「売り上げ」は他の語と組み合わせて用いることがしばしばあります。例えば、「売上高」や「売上金」といった表現がその典型です。

複合語での送り仮名の省略規則

送り仮名の付け方 複合の語 通則7
複合の語のうち,次のような名詞は,慣用に従って, 送り仮名を付けない。

〔例〕
(1) 特定の領域の語で,慣用が固定していると認められるもの。
ア 地位・身分・役職等の名。
関取 頭取 取締役 事務取扱
イ 工芸品の名に用いられた「織」,「染」,「塗」等。
《博多》織 《型絵》染 《春慶》塗 《鎌倉》彫 《備前》焼
ウ その他。
書留 気付 切手 消印 小包 振替  切符 踏切 請負 売値 買値 仲買 歩合 両替 割引 組合 手当 倉敷料 作付面積  売上《高》 貸付《金》 借入《金》 繰越《金》 小売《商》 積立《金》 取扱《所》 取扱《注意》 取次《店》 取引《所》 乗換《駅》 乗組《員》 引受《人》 引受《時刻》 引換《券》 《代金》引換 振出《人》 待合《室》 見積《書》 申込《書》

(2) 一般に、慣用が固定していると認められるもの。
奥書 木立 子守 献立 座敷 試合 字引 場合 羽織 葉巻 番組 番付 日付 水引 物置 物語 役割 屋敷 夕立 割合 合図 合間 植木 置物 織物 貸家 敷石 敷地 敷物 立場 建物 並木 巻紙 受付 受取 浮世絵 絵巻物 仕立屋

(注意)
(1) 「《博多》織」,「売上《高》」などのようにして掲げたものは,《 》の中を他の漢字で置き換えた場合にも,この通則を適用する。

(2) 通則7を適用する語は,例として挙げたものだけで尽くしてはいない。したがって,慣用が固定していると認められる限り,類推して同類の語にも及ぼすものである。通則7を適用してよいかどうか判断し難い場合には,通則6を適用する。

引用元:内閣告示第二号:送り仮名の付け方 複合の語 通則7

 

他の語と組み合わせる際は、通常送り仮名を付けません。これは「送り仮名の付け方 複合の語 通則7」に基づいており、特定の名詞や慣用が固定している表現において送り仮名を省略することが規定されています。

例を挙げると、「売り上げ」+「高」では「売上高」と記され、「売り上げ」+「金」では「売上金」となります。これらの表現は社会に広く浸透しており、慣用的に送り仮名を省略するのが一般的です。

内閣告示に記載されている通り、「売上高」や「売上金」のように慣用が固定している場合は、送り仮名を省略することが推奨されています。これは、「売り上げ高」や「売上げ高」、「売り上げ金」や「売上げ金」といった表記が違和感を与えるためです。

したがって、「売上」を使用する適切な場面は、これらの慣用表現に限定されます。動詞形の「うりあげる」「うりあげよう」を「売上る」「売上よう」と表記することは不適切です。

このルールに従うことで、文書の正確性と専門性が保たれます。

 

公用文における「うりあげ」の標準表記法

次に、公務員向けの公用文における「うりあげ」の正しい表記方法を紹介します。

① 公用文における「うりあげ」の表記基準

公用文では、「うりあげ」は「売上げ」と表記されることが定められています。これは内閣訓令第一号(2010年11月30日告示)に基づくもので、「常用漢字表(別紙)」に詳細が記載されています。

 

(別紙)公用文における漢字使用等について

2 送り仮名の付け方について

(1) 公用文における送り仮名の付け方は,原則として,「送り仮名の付け方」(昭和 48 年内閣告示第2号)の本文の通則1から通則6までの「本則」・「例外」,通則7及び「付表の語」(1のなお書きを除く。)によるものとする。
ただし,複合の語(「送り仮名の付け方」の本文の通則7を適用する語を除く。)のうち,活用のない語であって読み間違えるおそれのない語については,「送り仮名の付け方」の本文の通則6の「許容」を適用して送り仮名を省くものとする。
なお,これに該当する語は,次のとおりとする。

明渡し 預り金 言渡し 入替え 植付け 魚釣用具 受入れ 受皿 受持ち 受渡し 渦巻 打合せ 打合せ会 打切り 内払 移替え 埋立て 売上げ 売惜しみ 売出し 売場 売払い 売渡し 売行き 縁組 追越し 置場 贈物 帯留 折詰 買上げ 買入れ 買受け 買換え 買占め 買取り 買戻し 買物 書換え 格付 掛金 貸切り 貸金 貸越し 貸倒れ 貸出し 貸付け 借入れ 借受け 借換え 刈取り 缶切 期限付 切上げ 切替え 切下げ 切捨て 切土 切取り 切離し 靴下留 組合せ 組入れ 組替え 組立て くみ取便所 繰上げ 繰入れ 繰替え 繰越し 繰下げ 繰延べ 繰戻し 差押え 差止め 差引き 差戻し 砂糖漬 下請 締切り 条件付 仕分 据置き 据付け 捨場 座込み 栓抜 備置き 備付け 染物 田植 立会い 立入り 立替え 立札 月掛 付添い 月払 積卸し 積替え 積込み 積出し 積立て 積付け 釣合い 釣鐘 釣銭 釣針 手続 問合せ 届出 取上げ 取扱い 取卸し 取替え 取決め 取崩し 取消し 取壊し 取下げ 取締り 取調べ 取立て 取次ぎ 取付け 取戻し 投売り 抜取り 飲物 乗換え 乗組み 話合い 払込み 払下げ 払出し 払戻し 払渡し 払渡済み 貼付け 引上げ 引揚げ 引受け 引起し 引換え 引込み 引下げ 引締め 引継ぎ 引取り 引渡し 日雇 歩留り 船着場 不払 賦払 振出し 前払 巻付け 巻取り 見合せ 見積り 見習 未払 申合せ 申合せ事項 申入れ 申込み 申立て 申出 持家 持込み 持分 元請 戻入れ 催物 盛土 焼付け 雇入れ 雇主 譲受け 譲渡し 呼出し 読替え 割当て 割増し 割戻し

(2) (1)にかかわらず,必要と認める場合は,「送り仮名の付け方」の本文の通則2,通則4及び通則6((1)のただし書の適用がある場合を除く。)の「許容」並びに「付表の語」の1のなお書きを適用して差し支えない。

引用元:内閣訓令第1号:(別紙)公用文における漢字使用等について

この訓令によると、公用文における送り仮名の付け方は、「送り仮名の付け方」(昭和48年内閣告示第2号)の規則に準拠します。この規則では、活用のない語や読み間違いのおそれのない語に関しては、送り仮名を省略することが許容されています。

この規則により、公用文では「売り上げ」ではなく「売上げ」とのみ表記することが義務付けられており、これが公務員が公式文書を作成する際の標準とされています。このような規定は公用文における言葉の統一性を保つために重要です。

この内閣訓令には、他にも多くの例が挙げられており、公用文の整合性を保つための基準として機能しています。

 

公用文における複合語の「うりあげ」表記

公用文での「うりあげ」の基本形が「売上げ」であることは前述の通りですが、他の語と組み合わせる場面ではどのように表記するのでしょうか。

公用文においても、「うりあげ」が「高」や「金」といった語と組み合わされる場合、「売上高」「売上金」といった形で使用されます。この場合、送り仮名は省略されるのが一般的です。

この表記法は、公用文においても他の文脈での使用と一致しており、特に異なる点はありません。これにより、公用文における言葉の統一性と正確性が保たれています。

参考となる資料として、文化庁が公開している「No.21 公用文の書き方資料集」があります。この資料集は公用文における様々な表記基準を詳細に説明しており、具体的にはPDFファイルの192ページに「送りがなのつけ方」や「文部省 公用文送りがな用例」が記載されています。

このリソースは、以下のURLからアクセス可能です:

【No.21 公用文の書き方資料集】 http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/series/21/21.html

これらの資料は、公用文における正しい表記を理解するために非常に有用です。

 

公用文における「うりあげ」の動詞形の正しい表記

公用文での「うりあげ」の名詞形は「売上げ」と表記しますが、動詞形での使用には異なる規則が適用されます。

公用文における「うりあげ」の動詞形は「売り上げる」「売り上げよう」と表記される必要があります。国の公式文書にこれらの用法を定めた記載がないため、地方自治体がこの部分を補足しています。

特に静岡県は、その公用文の表記ガイドラインを提供しており、「売り上げる」という動詞形を明確に指定しています。これは静岡県文書管理規程の抜粋版「公用文 用字・用語・送り仮名 例集」(平成26年3月2日改訂新版)に基づいています。

この資料では、「売上げ」が名詞形として、また「売り上げる」と動詞形として使用されることが明記されています。これにより、公用文における一貫した言語使用が促されます。

引用元:静岡県文書管理規程:公用文 用字・用語・送り仮名 例集

このように、名詞としての使用とは区別して、動詞としての「うりあげる」は「売り上げる」と表記することが求められています。これは、動詞の活用形である「売り上げよう」にも同様に適用されます。

 

まとめ

「売り上げ」「売上げ」「売上」の表記の違いとその使い分けについて解説しました。以下にその概要をまとめます。

私文書における「うりあげ」

  • 名詞形: 主に「売り上げ」を使用しますが、「売上げ」も許容範囲内です。
  • 動詞形: 「売り上げる」「売り上げよう」が基本で、許容範囲として「売上げる」「売上げよう」も使用可能です。
  • 他語と組み合わせた名詞形: 「売上高」「売上金」など、送り仮名を省略して表記します。

公用文書における「うりあげ」

  • 名詞形: 一律に「売上げ」と表記します。
  • 動詞形: 「売り上げる」「売り上げよう」と表記し、送り仮名の省略はしません。
  • 他語と組み合わせた名詞形: こちらも「売上高」「売上金」と送り仮名を省略して表記します。

この解説が、それぞれの表記の適切な使用法を理解するのに役立つことを願っています。

 

内閣の訓令?で表記が定められているのは意外でした。

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