「覚える」と「憶える」。
これらの単語を入力すると、同じ「おぼえる」という読みで、異なる二つの漢字が候補に上がりますね。
どちらの漢字を選ぶべきか迷う瞬間があります。
そこで、この記事では「覚える」と「憶える」の意味の違いと、その使い方について詳しく調べてみました。
実は、この二つにははっきりとした差異が存在するのです!
この記事で、「覚える」と「憶える」の使い分け方を具体的な例と共に解説していきます。
「覚える」と「憶える」の違いを探る
まずは、「覚える」と「憶える」の意味の違いについて解説します。
「覚える」は一般に記憶する行為を指しますが、その用法はもっと多岐にわたります。具体的には、「技能や知識を習得する」という意味や、「ある感情を抱く」という意味も含まれます。
一方、「憶える」は純粋に記憶する行為に限定されます。
こうした違いを簡単に説明した後、さらに詳しく掘り下げてみましょう。
「覚える」の用法とその広がり
「覚える」には三つの主要な意味があります。
- 「記憶する」:例えば「数学の公式を覚える」「重要な日付を覚える」という使い方で、情報を心に留める行為を示します。
- 「身につける・習得する」:「新しい言語を覚える」「料理の技術を覚える」といった文脈で使用され、知識や技能の習得を意味します。
- 「感じる」:「違和感を覚える」「喜びを覚える」といった使い方で、ある感情を感じ取る状態を表します。
「憶える」の定義と適切な使用法
「憶える」という動詞は、主に「記憶する」という行為に特化しています。
「憶える」には「身につける・習得する」や「感じる」といった広がりは含まれておらず、純粋に情報や事実を記憶することを指します。
例えば、「円周率を20桁まで憶える」や「私は人の名前を憶えるのが苦手」といった表現は、「憶える」の用法として正しいです。
一方で、「柔道で新しい技を憶える」や「新しい家電の使い方を憶える」といった表現は誤りです。これらの文脈では「覚える」を使用するべきで、「憶える」は不適切です。
ただし、「家電の使い方を憶える」と言う場合、その使用が単に操作手順を記憶することに限定されるならば、「憶える」を使うことも間違いではありません。
さらに、「憶える」という漢字の成り立ちを見てみると、「憶」は「心(りっしんべん)」と「意」という部分から構成されています。ここでの「意」は、本来「言葉(音)」になる前の「思い(心)」を表します。従って、「憶」の文字は、思いを深く心に留めることを強調しています。
「覚える」と「憶える」の相違点を整理
このセクションでは、「覚える」と「憶える」の違いを再確認しましょう。
両語は「記憶する」という基本的な意味では共通していますが、その使用法には顕著な違いがあります。
「覚える」はその用法がより広範にわたり、「記憶する」だけでなく、「技能や感情を身につける、あるいは感じる」といった多様な状況に対応します。
対照的に、「憶える」は記憶する行為に特化しており、「身につける・習得する」や「感じる」という意味合いは含まれていません。
このような違いを理解することで、正確な表現を選ぶ際に役立ちます。
「覚える」と「憶える」の辞書定義の探究
辞書における「覚える」と「憶える」の定義を詳しく見ていきましょう。
「覚える」の辞書における意味
【覚える】
- 記憶する:何かを忘れずに心に留めること。「この詩を長く覚えている」
- 習得する:新しい技術や知識を学び取ること。「ピアノを覚える」
- 感じる:ある感情や印象を持つこと。「不安を覚える」
[注記] この用法では「憶える」とも表記されることがあります。
引用元:旺文社国語辞典
これにより、以前の説明と一致することが確認できます。
「憶える」の辞書での意味
意外なことに、「憶える」という表記は辞書で独立した項目として存在しませんでした。
前述の通り、「覚える」の項目において「憶える」と書く場合もあると記載されています。これは、「憶える」が「覚える」と非常に密接な関連を持っているためです。
なお、「憶」の漢字は常用漢字表には掲載されており、「オク」と読むのが通常ですが、「おぼえる」としては使われません。これが辞書に独立して記載されない理由の一つかもしれません。
ただし、これが常用漢字表にないというわけではなく、使用が間違いだというわけでもありません。
「覚える」と「憶える」の実践的な使用例
このセクションでは、「覚える」と「憶える」をどのように使うか、具体的な例文を通じて見ていきます。
「覚える」の使用例
- 「そのタイヤをいつ購入したか覚えていますか?」(記憶の例)
- 「町の理髪店の主人は、当時のことをしっかり覚えている。」(記憶の例)
- 「バスケットボールの理想のフォームとシュートタイミングを覚えることが重要です。」(習得の例)
- 「あの映画の特定のシーンから強い違和感を覚えました。」(感じるの例)
「憶える」の使用例
- 「試合の緊張感の中、何も憶えていない。」(記憶の例)
- 「あの夏、ほたるを一緒に見たことを憶えています。」(記憶の例)
- 「チームメンバーの個性や特徴を憶えるのは、実際の交流がなければ困難だ。」(記憶の例)
- 「サッカーワールドカップ前に、覚えておくべき選手が何人かいます。」(記憶の例)
ここでの例文は、それぞれの単語がどのように文脈に適しているかを示しています。「憶える」の例では、すべて情報や事象を記憶していることを強調しており、「覚える」の例では、記憶、習得、感じるという広範な意味が示されています。
まとめ
ここで、「覚える」と「憶える」の意味の違いとその使い分けについて要点をまとめます。
「覚える」は多様な意味を持ち、主に以下の三つの用法があります:
- 記憶すること:情報や事実を心に留める。
- 身につける・習得する:新しいスキルや知識を学ぶ。
- 感じる:ある感情や感覚を抱く。
一方、「憶える」はより限定的で、主に以下の意味に用いられます:
- 記憶すること:何かを忘れずに心に留めておく。
「憶える」には「覚える」の持つ「身につける・習得する」や「感じる」という意味は含まれておりません。この違いを理解することで、日常のコミュニケーションや書き言葉での表現がより正確になります。
